> 今週のトピックス > No.2105 |
![]() |
適年の移行期間終了で公的年金等控除適用外へ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() |
![]() |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() |
![]() 企業年金制度のひとつ「適格退職年金」は、受給者の権利が十分に守られないなどの理由から2012年3月末で廃止されることが決まっている。廃止決定から約10年間の移行期間が設けられていたが、中小企業を中心に制度の移行が終わっていない会社は多い。移行期間が終わってしまうと、それまで受けられた税制の優遇措置が受けられなくなる。受給者にとっては、会社の手続きの遅れによって不利益を被るわけだが、それはどのような不利益か見てみよう。
![]() ● 受給者への課税
適格退職年金から受け取る年金は、税務上公的年金に準ずる扱いとなり、公的年金等控除額を差し引くことができる。しかし移行期間終了後は公的年金等控除を使えなくなるため、その分課税される所得額は高くなってしまう。
例えば65歳以上で公的年金を240万円(年間)、適格年金を120万円(年間)受け取っていて他に雑所得がない場合で試算してみよう。公的年金等の収入額は360万円。下記の表から「公的年金等控除額」は、 「360万円×25%+37.5万円=127.5万円」 と計算され、雑所得の金額は 「360万円−127.5万円=232.5万円@」となる。 一方、適格年金からの給付が公的年金等とみなされなければ、公的年金等控除額は公的年金だけが対象となるため120万円で、雑所得の金額は 「240万円−120万円+120万円=240万円A」となる。 両者の所得差(A-@)は7万5,000円である。他に所得がなければ社会保険料控除や基礎控除などの所得控除を全額差し引けるため、課税所得は195万円未満となり所得税の税率は最低税率の5%。住民税(一律10%)と合わせて税率合計は15%である。この税率で計算すると、後者の方が「7万5,000円×15%=1万1,250円」だけ税金が多くなる計算だ。税額が多くなれば、税額を基に計算される国民健康保険料等が高くなるなど、負担は増す。 ![]()
![]()
公的年金等控除が使えないからと、年金の残りを一時金で受け取ると税金はどうなるだろう。退職時などに企業年金を一時金で受け取った場合には、それは退職所得となり、退職所得控除が使える上に他の所得とは別に課税される(分離課税)。ところがすでに受け取り始めた企業年金を一時金で受け取った場合には一時所得とみなされるため、退職所得控除額は使えない。
![]()
![]()
勤続年数25年のケースで見てみよう。この人の退職所得控除額は、上記の式から
「800万円+70万円×5年=1,150万円」 企業年金から受け取る一時金が1,000万円だった場合、退職所得とみなされれば、退職所得控除額以内なので税金はかからない。しかし、一時所得として課税されるなら退職所得控除額は控除できない。また分離課税ではなく他の所得と合算で課税される総合課税となるので、課税価格が高くなって税率も高くなる可能性がある。 先の例では、一時所得は950万円(「1,000万円−50万円」)で、その1/2である475万円が他の所得と合算で課税される。仮に税率が20%(所得税10%、住民税10%)とすると、税額は95万円(475万円×20%)。1,000万円のうち、1割近く手取りが減ってしまうことになる。 ![]() ● 少しでも早めの移行を
適格退職年金を平成24年3月末までに移行しなかった場合には、受給者は前述のような不利益を被ることになるが、企業にとっても掛金の損金算入ができないなど優遇措置がなくなる。それならやめればいいという経営者は少なくないが、退職金制度は会社と社員との契約であり、税制の優遇がなくなったからと勝手にやめてしまうと、労働条件の不利益変更とみなされることもあるのだ。
適格退職年金の移行期限まであと1年半。制度移行を行うなら、今が最後のチャンスではないだろうか。 ![]()
(山田静江 CFP®)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
2010.09.13 |
![]() |
|