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にわかに注目を集める「環境税」の創設
●  環境省が2011年度税制改正要望で提唱
  2011年度税制改正に向けて各省庁の税制改正要望が出揃ったが、減税項目は法人税率の5%引下げや証券優遇税制の延長が焦点となっている。しかし、財政事情が厳しいなかでの財源確保が問題となる。例えば、法人税率を5%引き下げると税収が1兆円程度減る見込み。そうしたなか、にわかに注目されているのが「環境税」の創設である。
  環境省は、2011年度税制改正要望のなかで、「地球温暖化対策(低炭素化促進)のための税制全体のグリーン化」として、全化石燃料に課税する「地球温暖化対策のための税」、いわゆる「環境税」の創設を提唱している。環境税は、昨年末に閣議決定した2010年度税制改正大綱において、「2011年度実施に向けた成案を得るべく、さらに検討を進める」こととされ、所得税法等の一部を改正する法律附則にも規定されていた。
●  実施時期は2011年度からを想定
  「地球温暖化対策のための税」の基本的な考え方は、以下のとおり。
  課税対象は、ガソリン、軽油、重油、灯油、航空機燃料、天然ガス、LPG、石炭といった全ての化石燃料で、幅広く負担を求める。税率は、CO2排出抑制効果や、国の地球温暖化対策に必要な所要財源、各化石燃料の担税力、国際的な税負担のバランスを勘案しつつ設定する。
  課税の基本的な仕組みは、現行の石油石炭税の課税対象である全化石燃料については、家庭を含めた幅広い分野をカバーし、執行が容易・確実となるような簡素性を考え、輸入者・採取者の段階(現行の石油石炭税の課税段階)で課税する。その税率はCO2排出量に応じたものとする。
  ガソリンについては、
(1)  他の主要国でも他の化石燃料に比べ高率の課税が行われていること
(2)  運輸部門のCO2排出量に占める割合が多いこと
(3)  運輸部門の多くの部分は国内排出量取引制度で直接にカバーされていないことから、CO2排出抑制効果が働かないこと
から、これに加えて、製造者等の段階(現行の揮発油税の課税段階)で、上乗せの負担を求める。
  実施時期は、2011年度からを想定している。
●  全化石燃料への課税
  全化石燃料への課税の具体的仕組みは、原油、石油製品(ガソリン、軽油、重油、灯油、航空機燃料)、ガス状炭化水素(天然ガス、LPG等)、石炭を対象に輸入者・採取者の段階で課税する。
  現行の石油石炭税で免税となっている、製品原料としての化石燃料(ナフサ)、鉄鋼製造用の石炭・コークス、セメントの製造に使用する石炭、農林漁業用のA重油は、輸入者・採取者段階の課税の下でも執行できるシステムが整っていることや、政策的必要性が認められることから、免税とする。
  使途については、エネルギー起源CO2の排出抑制対策に全額充てることとし、その具体的仕組みについては、現行エネルギー対策特別会計を活用しつつ、経済産業相と環境相が管理する。その名称等については、歳出の具体的内容、地球温暖化対策の中での位置づけを勘案の上、2010年末までに検討する。
  税率については、原油、石油製品、ガス状炭化水素、石炭にCO2排出量に応じた負担を求めるが、その具体的な税率水準については、エネルギー起源CO2の排出抑制に向けた財源、CO2排出抑制効果、国際的な税負担のバランスを勘案し、年末までに決定することとしている。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2010.09.13
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