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「顔面神経麻痺」告知における留意点
  今回は「顔面神経麻痺」についてです。顔面神経麻痺の多くは、ある日突然、片側に起こります。鏡を見て顔がひずんでいることで気付く場合もありますが、以下のような症状があります。
  ・まぶたを閉じることができない
  ・コップで水を飲むときにこぼれてしまう
  ・おでこにしわを寄せることができない
  ・味覚がおかしくなった 等
ちなみに顔面神経麻痺を疑ったときに受診する科はどこでしょうか?
答え→→耳鼻咽喉科/神経内科です。
●  疾患概念
  脳幹から直接出ている末梢神経は、脳神経と呼ばれ左右12対あります。顔面神経はその7番目(第七脳神経)で、顔面の表情筋の運動や舌の前方2/3の味覚、涙腺や唾液腺の分泌に関与しています。顔面神経麻痺はこの神経が何らかの原因で障害され、さまざまな症状が生ずるものです。顔面神経麻痺の約7割は特発性で原因不明の「ベル麻痺」と言われています。
  ちなみに痛みのある顔面神経痛(三叉神経痛)は三叉神経が原因で、全く違う病気です。
●  末梢性? 中枢性?
  顔面神経麻痺は「末梢性」と「中枢性」に分かれます。
  ■抹消性顔面神経麻痺には下記があります。
  ・ベル麻痺:特発性で原因は不明。寒冷刺激やストレスが原因ともいわれています。
  ・ラムゼイ・ハント症候群:帯状疱疹ウイルス感染によるものです。
  ・慢性中耳炎・耳下腺腫瘍の術後等
  ・側頭骨骨折などの外傷や顔面神経管の圧迫:分娩時の後遺症等
  ・顔面神経自体の腫瘍:神経鞘腫
  ・糖尿病性:糖尿病性神経障害によるものです。

  ■中枢性顔面神経麻痺には下記があります。
  ・脳血管疾患、脳腫瘍、聴神経腫瘍の術後等

  中枢性顔面神経麻痺の場合の特徴は、まゆ毛は動かすことができますが、手足の麻痺など、顔面神経麻痺以外の症状を併発します。
  末梢性顔面神経麻痺の場合の特徴は、まゆ毛も含めて麻痺が起こることが多いためまゆ毛は動かすことができませんが、通常手足の痺れなどの症状が出ることはありません。
●  治療
  顔面神経麻痺の中で一番多いベル麻痺は原因不明のため、マッサージや温熱療法(温かいタオルで顔を温め、血行を促す)などのリハビリで軽快します。しかし、目や口を閉じることが困難といったような重症例に対しては、ステロイド治療もおこなわれます。また、「ボトックス注射」で治療する場合もあります。ボツリヌス毒素を皮膚に数カ所注射し筋肉の収縮を抑制するものです。これは数カ月間効果が持続します(最近は、美容で使用されますね)。
  そのほかに外科的に手術の適用となる場合もあります。
  対症療法としては、十分な睡眠や、ストレスをためない生活等を送ることが肝心です。脳血管疾患、脳腫瘍などを原因とする中枢性顔面神経麻痺の場合は、外科手術等の原因疾患の治療が必要となります。
●  ご契約をいただく際には
  顔面神経麻痺の大部分は予後が良いベル麻痺ですが、中枢性との鑑別が重要となります。顔面神経麻痺を告知される場合に原因の記載がないと、年齢・治療・入院の有無や期間等により、中枢性と末梢性の鑑別をすることになります。中枢性顔面神経麻痺と思われる場合には、保険の加入は難しくなります。
  ベル麻痺などの末梢性顔面神経麻痺の場合は(わかる範囲で)原因・経過年数・重症度・治療内容(手術の有無)・後遺症の有無を告知することをお勧めします。
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2010.09.22
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