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職場におけるメンタルヘルス対策に新たな枠組み〜厚生労働省検討会
●  労働者のプライバシーの保護は、最優先
  厚生労働省は、このたび、「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」の報告書を取りまとめて、公表した。この検討会は、今年5月に厚生労働省の「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」がまとめた報告の中で、職場におけるメンタルヘルス対策が重点の一つとされたことを受け、設けられた。また、新成長戦略(平成22年6月18日閣議決定)において、2020年までの目標として「メンタルヘルスに関する措置を受けられる職場の割合100%」が掲げられたことも背景にある。
  報告書では、労働者のプライバシーが保護されること、労働者が健康の保持に必要な措置を超えて、人事、処遇等で不利益を被らないこと等、基本的な方針を定めた。今後は、この報告書を基に労働政策審議会で制度改正に向けた議論を始めることになっている。
●  労働者の状況と事業場の取組状況から見えてくる課題
  「労働者健康状況調査報告(平成19年)」によると、「仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスがある」とする労働者の割合は約58%にも上り、また、「過去1年間にメンタルヘルス上の理由により連続1カ月以上休業または退職した労働者がいる」とする事業場の割合は約8%となっている。
  さらに、上記報告によると、「心の健康対策(メンタルヘルス対策)に取り組んでいる事業所」の割合は、約24%(平成14年)から約34%(平成19年)へ増加しているが、いまだ約7割の事業場が取り組んでいない状況にある。事業場が対策に取り組んでいない理由としては、「専門スタッフがいない」(約44%)、「取り組み方が分からない」(約42%)、「必要性を感じない」(約29%)、「労働者の関心がない」(約28%)となっている。
  メンタルヘルス不調者を含めた労働者が、職場環境から受けるさまざまなストレス等の要因に関して早期に適切な対応が実施されるよう、健康管理に関する新たな枠組みを導入することにより、職場におけるメンタルヘルス対策の取組を促進すべきであるという結論については賛同したいところだ。
●  一般定期健康診断に併せ、ストレスに関連する労働者の症状チェックへ
  このような現状をふまえた結果、報告書のポイントをまとめると下記のとおりとなる。
   <報告書のポイント>
   1.  一般定期健康診断に併せ、ストレスに関連する労働者の症状・不調を医師が確認する。
   2.  面接が必要とされた労働者は産業医等と面接を行う。その際は、上記ストレスに関連する症状や不調の状況、面接が必要かについて事業者に知らせない。
   3.  産業医等は労働者との面接の結果、必要と判断した場合は労働者の同意を得て、事業者に時間外労働の制限や作業の転換などについて意見を述べる。
   4.  事業者は、労働時間の短縮等を行う場合には、産業医等の意見を労働者に明示し、了解を得るための話合いを行う。
参考:厚生労働省 「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」報告書
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000q72m.html

(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2010.09.22
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