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非上場会社の会計基準に関する懇談会が報告書を公表
  日本商工会議所、日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本経済団体連合会、企業会計基準委員会等で構成する「非上場会社の会計基準に関する懇談会」(座長:安藤英義・専修大学教授)はこのほど、報告書を公表した。
  日本の会計基準の国際化を進めるに当たり、非上場会社の実態・特性を踏まえた会計基準のあり方につき、その多様性にも配慮し、経済の成長や企業活力の強化に資するという観点も考慮に入れ、幅広く検討したとしている。
●  非上場会社の多様性などの現状
  報告書によると、わが国非上場会社の現状について、わが国における法人税の申告会社は約260万社であり、そのうち上場会社は約3,900社であるため、大半の企業は非上場会社である。非上場会社には、金融商品取引法に定められる監査の対象となる会社(約1,000社)や会計監査人の会計監査が義務付けられる会社法上の大会社(約1万社)がある一方で、それら以外の中小企業が大半を占め、極めて幅広い構成となっている。
  したがって、非上場会社の会計基準のあり方を検討する場合、これらの多様性を十分に考慮する必要があるとの考えを示している。
  また、非上場会社のうち中小企業においては、財務諸表の利用者についてはごく少数の株主のほか、金融機関、取引先、税務当局などに限定される場合が多い。さらに、経理の実態については、会計帳簿の記帳も十分には行えず、税理士等に委託するケースも多く、経理担当者の会計基準に対する知識や人員体制が必ずしも十分ではないことが多いという実情を指摘している。
●  新たな会計指針の作成と現在の中小指針の見直し
  こうした非上場会社の現状を踏まえ、報告書では、中小企業の活性化、ひいては日本経済の成長に資するという観点から、また、適用される会計指針については、国際基準の影響を受けず安定的なものにすることを基本的なスタンスとし、1点目は、「会社法上の大会社以外の会社」につき一定の区分を設け、その区分に該当するものについては、中小指針とは別に新たな会計指針を作成する、2点目は、現在の会計指針を見直す、との具体的な対応を示している。
  1点目の一定の区分に該当する会社群に適用する会計指針には、
   (1)  中小企業の実態に即し、経営者に容易に理解されるものとする
   (2)  国際基準の影響を受けないものとする
   (3)  法人税法に従った処理に配慮するとともに、会社法第431条に定める「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に該当するよう留意する
   (4)  新たに設ける会計指針の作成主体は、中小企業庁の研究会の動向も踏まえて、今回の報告書公表後、関係者にて検討する
ことを盛り込むこととしている。
  2点目の中小指針の見直しに関しては
   (1)  平易な表現に改める等、企業経営者等が利用しやすいものとする
   (2)  会計参与が拠るべきものとして一定の水準を引き続き確保するものとする
   (3)  会社法上の大会社以外の会社すべてを新たな会計指針と現在の中小指針でカバーするため、現在の中小指針を適用する会社群は、中小指針の見直し時に、新たに設ける会計指針の適用される範囲と整合性のとれるものとする。
  今後、この報告書の趣旨に沿って、具体的な指針の策定作業が行われる予定となっている。
同報告書の全文は↓
http://www.jcci.or.jp/20100830kaikei/20100830_kaikei.pdf

(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2010.09.22
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