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増えているお墓の引越し〜改葬
  団塊世代の高齢化は、社会に大きな変化をもたらしているが、そのひとつが、改葬−お墓の引越し−の増加だ。高度成長期に青年期を迎えた団塊世代の多くは、進学や就職で大都市圏に移住し、それぞれ新しい土地にマイホームを購入して定住した。定年を迎えても多くの人はふるさとには帰らない。そこで懸案となるのが、ふるさとにある親または先祖代々の墓をどうするか、ということだ。
  定期的なお寺との付き合いやお墓の手入れなど「墓守」をする人がいない、自分も高齢になると墓参りさえ負担になる。そういう人の選択肢として「改葬」が注目されている。
●  改葬の手順
  改葬の手続きは、寺院墓地が民間の墓地か、またその土地の慣習によっても多少異なるが、一般的な手順は以下のようになる。
(1)  新たな墓地を決めて、そこで墓地利用許可証と受入証明書等の書類を発行してもらう
(2)  現在のお墓の管理者に改葬することを伝えて、埋蔵証明書に記入してもらう
(3)  記入済みの埋蔵証明書と墓地利用許可証、受入証明書を添付して、改葬許可申請書を、古いお墓のある市区町村役場に提出
(4)  (書類に不備がなければ)改葬許可証が発行される
(5)  (4)の改葬許可証を新しい墓地に提出
以上で、書類上の準備が整う。
(6)  現在のお墓から骨壷を取り出して運び、新しいお墓に納骨。先祖のお骨を骨壷から出して袋にまとめて、新しい墓に納めることも可能。仏式なら、お骨を取り出すときの「閉眼供養(お魂抜き)」や、新しいお墓での「開眼供養(お魂入れ)」を行う。
●  改葬先のお墓は慎重に選ぶ
  墓の引越しはそう簡単に行えるものではないので、移転先の新しいお墓は、時間をかけて検討する必要がある。
  ひとつめのポイントは、お墓の跡継ぎ(継承者)がいるかどうか。跡継ぎやお墓を見てくれる人がいない場合には、無縁墓となることを避けるため、永代供養墓など一代限りのお墓を選ぶか、維持管理が比較的簡単な納骨堂などを選んで、自分の死後は誰かに託すこととなる。
  場所も重要だ。自宅から何時間もかかるような場所、自動車でしか行けない場所、長い階段や坂を上らなければならない場所は、年をとると行きづらくなる。
  そして最後のポイントは費用の問題。改葬に際しては、「新しいお墓の取得費用」と「現在のお墓の撤去費用(大きさによるが30万円程度から)」、そして閉眼供養などの儀式を頼む僧侶への支払い(お布施)などが必要になる。墓地の使用料(永代使用料)は立地がいいほど高くなるし、墓石の値段もさまざまである。ふるさとにあるような立派な墓では、1,000万円近くかかってしまうこともある。お墓の移設で老後資金がなくなってしまった、という事態にならないように、マイホーム同様、都会のお墓はコンパクト&シンプルに考えることが大切だろう。
  なお、寺院墓地の場合には、お墓をすべて撤去することはイコール檀家ではなくなること(離檀)を意味する。それを避けるため、先祖のお骨はふるさとに残し、親のお骨のみ移す人もいるようだ。
  高度経済成長がもたらしたふるさとのお墓の問題。今後ますます、頭を悩ます人が増えるだろう。
CFP® 山田 静江
2010.10.18
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