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「前立腺肥大」告知における留意点
  前立腺肥大症は男性高齢者の病気で、前立腺の内部が腫大する疾患です。前立腺は重さ約15gのクルミ大の臓器で、それが肥大すると前立腺の中央を貫いている尿道を圧迫して排尿が困難になります。つまり尿の勢いがなくなったり、尿がまったく出なくなったりします(これを尿閉とよびます)。前立腺肥大症の人は排尿後も膀胱が完全に空にはならないので、残尿感があり尿路感染症や腎臓結石を起こしやすくなります。また尿閉状態が長引くと水腎症を起こすことになります。
  前立腺肥大の原因はわかっていませんが、男性ホルモンであるテストステロンの変化と関係があるといわれ、加齢(テストステロンの減少)とともに増え、特に50歳以上になると多くみられます。
●  検査・診断
  前立腺肥大症の検査はまず直腸診(直腸内指診)によりその肥大程度を観察します。直腸診とは医師が患者の直腸へ指を挿入して直腸前面に突出した前立腺を触診することです。
  血液検査では腎機能 やPSA(前立腺特異抗原)の濃度も測定します(PSA検査)。これは前立腺肥大症に前立腺がんが合併していることがあるためです。その他に超音波検査により前立腺の大きさや排尿後の膀胱内尿量を測定することもあります。
●  治療・予後
  尿路感染症、腎機能障害、血尿、腎臓結石、尿閉などの合併症がなければ経過観察します。治療する場合は、薬物療法・手術療法・その他の外科的治療をおこないます。
・薬物療法
     前立腺と膀胱の筋肉緊張を緩和し排尿しやすくするアルファ遮断薬(タムスロシン、テラゾシン、ドキサゾシンなど)を投与します。
・手術療法「前立腺切除術(TURP)」
     症状を緩和するには手術療法が一番良い方法です。一般的には内視鏡を尿道に挿入して経尿道的前立腺切除術を行い前立腺の一部を切除します。一晩の入院が必要です。しかし手術には感染や出血などの合併症のリスク、また尿失禁や永久的な勃起機能不全を起こすリスクもあります。
・その他の治療方法
     以下の特殊な装置を尿道に挿入し、前立腺組織を破壊します。
マイクロ波の熱(経尿道的高温度療法または経尿道的温熱療法)、針(経尿道的トランスアブレーション)、超音波(焦点式高密度超音波療法)、電気的蒸散(経尿道的電気蒸散療法)レーザー(レーザー療法)
  尿閉があれば尿道から膀胱にカテーテルを通して排尿し、感染があれば抗生物質で治療します。
●  ご契約をいただく際には
  お客さまから前立腺肥大症の告知をいただいたら、今後手術適応の可能性もあるため、入院保険に関しては、部位不担保等の条件付きでのご加入が考えられます。
  死亡保険については、前立腺がんの混入を考慮され、軽度保険料増しでの申込みとなるかもしれません。超音波検査やPSAの血液検査結果等のデータがあれば条件緩和の可能性もあります。治療方法等を詳細に告知していただくことが重要です。
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2010.10.25
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