>  今週のトピックス >  No.2125
労働時間に該当するもの、しないもの
●  未払い残業代を請求されないための対策が必要
  労働時間に関しては、「変形労働時間」や「みなし労働時間」などをはじめとして、詳細は労働基準法で定められているが、その運用は難しく苦労している企業も多いのが実態である。今回は、そもそも「労働時間」とはどういう時間のことをいうのかという基本的な事項について確認する。同時に、個別のケースについてそれが労働時間に該当するか否かについてもまとめておきたいと思う。
  これを機会に各企業の経営者および人事担当者は、社内の労働時間管理について再度点検し、間違っても経営にまで影響を与えるような未払い残業代の請求を受けることのないように、早めに対策をとりたいところである。
●  朝礼時間は、労働時間に該当する
  労働基準法でいう「労働時間」とは、一般的には「使用者の指揮監督のもとにある時間」のことであり、休憩時間を除いた時間のことをいう。必ずしも作業をしていることを要件とはしていないので、手待ち時間などで待機している時間についても労働時間とされることがあるので注意しなければならない。
  それではケースごとに労働時間に該当するかどうかについてみていきたいと思う。
  相談事例でよくあるのは、朝礼の時間についてである。朝礼の時間は、週に1度または月に1度であってもそれは労働時間になる。例えば30分前に出社を義務付けていれば、その時間が労働時間となるので、その日については特別に始業時刻を早くして、その分終業時刻も早くするなどの方法で対応するのが望ましい。
  始業前の時間のチームミーティングなども、それが強制参加のものであれば労働時間とみなされる。始業前の早出残業時間ということで従業員から賃金の未払い請求されたりしないためにも労務管理を徹底しなければならない。
  次に、自宅に持ち帰って仕事をしている時間であるが、これも会社が業務命令を出していればその仕事を自宅で行ったとしてもそれは労働時間とみなされる。もちろん、会社が命令はしていない場合でも、従業員本人からすれば会社の業務を遂行するためにやらざるを得ない状況下にあると考えるのが普通なので、このような場合も残業時間とみなされる可能性が高い。上司が「持ち帰り残業をしてはいけない」とはっきり命じないで黙認している場合は、労働時間となるので注意が必要だ。
●  残業は、事前許可制にして上司の承認を必要とする仕組みにする
  従業員が自主的に行う自由参加の勉強会などは、会社が参加を強制していないものであれば、その時間は労働時間には該当しない。もちろん、参加しなければ評価に影響したり、暗黙の了解で参加することが大前提となったりしている勉強会は、労働時間とみなされる。
  終業時刻を過ぎた後で、会社に残ってみんなで雑談をしたり、インターネットでゲームをしたり、という時間はいうまでもなく労働時間に該当しない。
  企業側としては、不必要な残業を少なくするためには、残業の事前申告許可制にすることから始めたいところである。事前申告してもらい、その内容を判断し、承認したときだけしか残業を認めないということにすれば、残業時間の削減に大いにつながるので、ぜひ導入してみてはいかがだろうか。
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2010.10.25
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