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「肝血管腫」告知における留意点
  「肝血管腫」という病名を聞いたことはありますか?
  一見怖そうな病名ですが、肝血管腫は肝臓にできる良性の腫瘍です。肝臓は血液が豊富な臓器で大小多くの血管が集まっているのですが、肝血管腫は肝臓の一部の毛細血管が嚢状に拡張・増殖して腫瘍状に発育したものをいいます。ほとんどが無症状なので、その多くは人間ドックの腹部超音波検査(腹部エコー)でみつかり、通常は治療というより経過観察となります。
  無症状の肝血管腫は成人の1〜5%にみられ、通常単発です。女性の頻度がやや高いといわれています。
●  治療
  生命予後は良好です。肝血管腫が比較的小さく、無症状であれば年1回程度の経過観察となります。大きさが5cmを超えると破裂による出血の危険性が高くなるので手術適応となることもあります。
  腹部膨隆などの症状がある場合や、急激な増大傾向にあるもの、また、まれですが破裂や出血傾向を呈するものは、外科的治療の対象となります。
  また、肝臓の表面にある肝血管腫(お腹を打ったりした場合に破裂して出血する危険のあるもの)、圧迫症状を起こすような腹部腫瘤、悪性との鑑別が困難なものも手術の対象となります。
●  鑑別診断
  生命保険に加入する際には、高分化型肝細胞癌、肝血管肉腫などの悪性腫瘍の可能性を除外することが特に大事になります。というのも、超音波検査やCTスキャンでの検査でも、がんとの鑑別が非常に難しい場合もあるからです(その他の肝臓の良性腫瘍には、腺腫様過形成、限局性結節性過形成、肝血腫などがあります)。
●  ご契約をいただく際には
  肝血管腫できちんと経過観察されていれば生命保険加入にはそれほど重大ではないでしょう。告知される場合には、人間ドック等で指摘された日、大きさの記入をお勧めします。
  万一、手術をされている場合には理由を確認してください(肝血管腫の位置や、大きさなど)。他の肝臓腫瘍との鑑別も重要になります。人間ドックなどによる定期健診で指摘され、大きさの変化ないものは無条件での加入も可能でしょう。医療保険については、部位不担保の条件が付く可能性があります。5cmを超えるようなものについては、破裂や手術の可能性もあるため医療保険については延期、死亡保険は保険金削減等の条件付きでの加入となることが考えられます。
  肝血管腫と告知をいただいても、年齢や治療法(手術痕)などから悪性の疑いがあれば、いったん延期という結果となることもあるので、まずは詳細の告知をいただくことが重要です。
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2010.11.08
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