>  今週のトピックス >  No.2132
年内で期限を迎える優遇措置
●  みなし取得費特例を使った売却は年内に
  年末まで残り2カ月を切り、そろそろ年内にするべきことを整理する時期である。税務上では、今年の年末までしか優遇措置を受けられない特例があるので、適用を考えている方については、年内にアクションを起こさなければならない。
  まずは、上場株式等のみなし取得費の特例である。これは、平成13年9月30日以前から引き続き所有していた上場株式等を今年の年末までに譲渡した場合に、取得価額を実際の取得費に代えて、平成13年10月1日における価格の80%に相当する金額とすることができる特例である。
  例えば、取得価額が分からないタンス株を売却する場合、年内の売却であれば、上記のみなし取得費特例が使えるが、来年以降の売却になると、売却価額の5%が取得費とされてしまう。みなし取得費特例を使って売却した方が有利な場合には、年内の売却を検討する必要がある。
●  売却を前提とした土地取得は年内が有利
  また、不動産関係では年内に期限を迎える優遇措置が2つある。1つは、「平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除」、もう1つは、「平成21年及び平成22年に土地等を先行取得したときの特例」である。これらについては、期限延長される可能性がゼロではないが、制度趣旨より延長の可能性は低いと思われる。
  1,000万円特別控除については、今年中に一定の要件を満たす土地等を取得すれば、平成28年以降(平成21年取得の場合は、平成27年以降)に売却した場合に、譲渡所得から1,000万円(譲渡所得の金額が1,000万円に満たない場合には、その譲渡所得の金額)を控除できる特例である。
  先行取得土地等の特例は、今年中に一定の要件を満たす土地等を取得すれば、その後10年以内に別の事業用土地等を売却した場合に、その売却益の60%(平成21年に先行取得土地等を取得している場合には80%)が繰り延べられる特例である。ただし、繰り延べられる金額は、先行取得土地等の取得価額が限度となる。
  具体的には、その売却益の60%部分を先行取得土地等の取得価額から減額する。そのため、その先行取得土地等を売却した場合には、繰り延べられた課税が実現することになる。これらの特例を適用するためには、年内に該当土地等を購入する必要がある。
●  住宅取得等資金の贈与
  また、年内に期限切れとなるわけではないが、来年になると優遇金額が減額となるのが、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税特例」である。直系尊属から、受贈者が要件を満たす住宅取得等資金の贈与を受けた場合、平成22年分の贈与については、基礎控除とは別枠で1,500万円が非課税となる特例である(合計所得金額が2,000万円超の場合には500万円)。来年の贈与の場合には、非課税枠が1,000万円となる(合計所得金額が2,000万円超の場合には適用なし)。1,000万円超の贈与を検討しているなら、年内の方が有利となる。
(村田 直 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2010.11.08
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