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法人の黒字申告割合は過去最低の25.5%
●  申告税額の総額は10%減の8兆7千億円
  国税庁が発表した2009事務年度の法人税の申告事績によると、今年6月末現在の法人数は前年度に比べ0.1%(4千法人)減の299万8千法人で、うち今年7月までの1年間に申告したのは、同0.7%(1万9千法人)減の278万6千法人だった。その申告所得金額は同10.9%(4兆1,564億円)減の33兆8,310億円、申告税額の総額も同10.1%(9,781億円)減の8兆7,296億円と、ともに1割程度減少した。
  前年度から申告事績の集計対象期間を「4〜3月決算ベース」(従来は「7〜6月申告ベース」)に変更しているが、申告所得金額、申告税額ともに3年連続の減少となる。この結果、法人の黒字申告割合は25.5%と、前年度に比べ3.6ポイント減少しており、初めて30%を割り込んで過去最低となった前年度をさらに下回った。景気後退で製造業や卸売業を中心に企業業績が大きく悪化したことが要因とみられている。
  法人の黒字申告割合は、過去最高だった1973年度(65.4%)の半分にも満たない低い数字が17年も続いている。黒字法人の申告所得金額も減少となったが、黒字申告1件あたりでは4,759万円で前年度に比べ2.3%の微増となった。一方、申告欠損金額は、ピークの2002年度(33兆116億円)に迫る勢いだった昨年度からは11.5%減の27兆3,632億円となった。赤字申告1件あたりの欠損金額は同15.2%減の1,319万円だった。
●  1件あたりの申告漏れ額は過去最高の1,474万円
  一方、今年6月までの1年間(2009事務年度)における法人税調査事績によると、不正計算が想定されるなど調査必要度の高い13万9千法人(前年度比4.5%減)を実地調査した結果、うち71.9%にあたる10万件(同6.0%減)から、前年度に比べ54.6%増の総額2兆493億円の申告漏れを見つけ、3,799億円(同16.1%増)を追徴した。
  申告漏れ額は、なかなか改善されない経済状況、景気動向による法人所得の低迷を反映して、調査件数や申告漏れ件数が減少しているため、前年度まで2年連続の減少となっていたが、大口・悪質な不正計算が予想される法人に加え、国際取引を行っている法人対しても深度ある調査が積極的に行われたこともあり、一転して大幅増加となった。これにより、1件当たりの申告漏れ所得金額も前年度に比べ61.8%増と500万円以上の増加となる1,474万円で過去最高を記録している。
  また、調査した21.0%にあたる2万9千件が故意に所得を仮装・隠ぺいするなどの不正を行っており、その不正脱漏所得は3.5%減の4,047億円だった。1件あたりの不正脱漏所得は前年度比3.5%増の1,385万円と2年連続で増加した。
●  「バー・クラブ」が8年連続で不正発見割合の高い業種ワースト1位
  不正を業種別(調査件数350件以上)にみると、不正発見割合の高い10業種では、「バー・クラブ」が57.9%で8年連続のワースト1位となった。「バー・クラブ」は2000年度まで14年連続1位という不名誉な記録を続けていたワースト業種の常連(唯一2001年度がワースト2位)。次いでこれも常連の「パチンコ」(48.7%)が続き、この2業種は7年連続でワースト1、2位となっている。3位は「廃棄物処理」(35.0%)。
  一方、1件あたりの不正脱漏所得金額が大きい10業種では、1、2位はともに前年ランク外の「水運業」(9,602万円)、「精密機械器具卸売」(4,694万円)、3位は前年2位の「建売、土地売買」(4,590万円)、4位は前年ランク外の「民生用電気機械器具電球製造」(4,544万円)となった。不正発見割合でワースト1位の「バー・クラブ」は高額10業種に入っておらず、1件あたりの不正脱漏所得金額は1,418万円と相対的に少ない。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2010.11.15
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