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「突発性難聴」告知における留意点
  難聴(なんちょう)とは、聴力の低下した状態をいいます。加齢に伴うもの、先天性のもの、あるいは突発性難聴のように突然起こるものなどがあります。また、少し耳が遠い程度から、まったく音を聞き分けられないレベルまで程度もさまざまです。
  難聴には「伝音性難聴」「感音性難聴」「混合性難聴(伝音性と感音性の混合)」があります。伝音性難聴は、音を伝える器官の機能的な障害によるものです。感音性難聴は、内耳あるいは聴覚神経に障害がある難聴で医学的な治療が困難です。聞こえないというより聞き取りづらいということもあるようです。
  「突発性難聴」は、急激に発症する感音難聴(通常は片側)のうち、明らかな原因のないもので、難病のひとつです。内耳循環障害説やウイルス感染説などがあり、30年間の疫学調査などから糖尿病が循環障害発症のリスクファクターと判明しましたが、明らかな原因は不明です。
●  診断基準(厚生労働省研究班によるもの)
  確実例は下記の主症状、副症状の全事項を満たすもの、疑い例は主症状の1および2の事項を満たすものです。
   【主症状】
    1.突然の難聴(明確に日時が特定できます)
    2.高度な感音難聴
    3.原因が不明、または不確実
   【副症状】
    1.耳鳴り(難聴の発症と前後して生じます)
    2.めまい(繰り返さない)、吐き気、嘔吐
●  鑑別・除外診断(突発性難聴と症状は似ているが区別しなくてはいけない疾患)
   ・特発性両側性感音難聴(難病):両側に発症かつ進行性のもの
   ・メニエール病(難病):症状が反復します
   ・聴神経腫瘍
   ・急性音響外傷: 野外コンサートやイヤホンからの急激な大音響にさらされた直後に高音から障害されます
   ・脳幹梗塞、小脳梗塞、多発性硬化症などの神経疾患等
   ・遅発性内リンパ水腫(難病)
●  経過・予後
  改善する場合には急速に改善し、徐々にプラトー(横ばい状態)に達するような経過を示します。もちろん徐々に回復する場合や、全く改善しない場合もあります。全体の1/3は完治し、残りの2/3は後遺症を残すといわれています。治療開始の時期、難聴の程度、めまいや耳鳴り等の副症状、年齢等により予後が左右されます。
●  ご契約をいただく際には
  突発性難聴は「再発しない」のが特徴です。もし、再発という告知があれば、他の疾患(メニエール病、聴神経腫瘍等他の鑑別疾患)である可能性も考えられるため告知書の記載内容によっては、前述の鑑別疾患とみなしての査定結果となることもあります。
  「完治」の告知をいただいた場合でも、数年間はその他の(鑑別診断にあるような)重篤な疾患の可能性も考慮に入れて査定をするため、死亡保険系は保険金削減などの特別条件付での引受、入院保険は延期とする会社が多いと思われます。
  ただし、CTやMRIなどの検査結果記載のある診断書を添付し、重篤な疾患を否定できる場合は、死亡保険系、入院保険とも軽度条件付き〜標準体での加入(入院保険は部位不担保等の条件)も可と思われます。数年経過後、異常がなければより軽い条件での加入が可能となるでしょう。
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2010.11.22
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