>  今週のトピックス >  No.2142
無所得申告法人と消費税還付法人は重点調査対象
●  赤字法人調査で約12%の約7千件が黒字に転換
  今年6月までの1年間(2009事務年度)における法人の黒字申告割合は過去最低の25.5%となり、7割強の法人が赤字となった。ところが、このような状況に便乗して実際は黒字なのに赤字を装う企業が後を絶たない。2009事務年度中に法人税の実地調査をした13万9千件のうち約40%にあたる5万6千件は無所得申告法人の調査に充てられ、うち11.6%の約7千社が実際は黒字だったことが、国税庁のまとめで判明した。
  調査結果によると、実地調査した5万6千件のうち約70%にあたる3万9千件から総額1兆1,772億円にのぼる申告漏れ所得金額を見つけ、加算税額を含む572億円の税額を追徴した。また、実施調査したうちの約4件に1件(23.8%)の1万3千件は仮装・隠ぺいなど故意に所得をごまかしており、その不正脱漏所得金額は1,811億円にのぼった。
●  1件あたりの申告漏れ所得は倍増の2,090万円
  2009事務年度の無所得申告法人調査は、前年度に比べ14.2%増の実地調査を行い、申告漏れ件数が135.2%の大幅増加、不正計算のあった件数も11.1%増となった。この結果、黒字となった法人が約7千社あったわけだが、調査で把握された1件あたりの申告漏れ所得は2,090万円にのぼる。この金額は、前年度からほぼ倍増しており、法人全体の平均1,474万円を大幅に上回る。不正申告1件あたりの不正脱漏所得金額は1,351万円となっている。
  なお、2009事務年度は、事業を行っていると見込まれる無申告法人3,418件(前年度比10.5%増)に対して調査を実施し、法人税について59億円(同0.7%減)、消費税についても43億円(同8.1%増)を追徴課税。そのうち295件(同20.9%増)は、借名口座を用いて利益を隠ぺいするなど意図的に無申告であった事案であり、法人税は30億円(同11.5%減)、消費税は9億円(同8.7%減)の追徴課税を行ったことが明らかになっている。
●  法人の消費税不正還付で追徴税額177億円
  一方、消費税は主要な税目の一つであり、預かり金的な性格を有するため、国民の関心が極めて高く、税収等の面でもその位置付けが高まっている。このような状況下、消費税について虚偽の申告により不正に還付金を得るケースが見受けられることから、企業に対する消費税調査はほとんどが法人税との同時調査だが、最近は、輸出企業を中心とした消費税単独の不正還付調査が増えている。
  これは、消費税法では商品の輸出や国際輸送、国際電話、国際郵便などの輸出取引に該当する場合、内国消費税である消費税は外国で消費されるものには課税しないという考えに基づき、消費税を免除していることを悪用し、虚偽の申告により不正に還付金を得るケースが見受けられるためだ。今年6月までの1年間(2009事務年度)においては、1万9件の消費税還付法人に対する調査が実施された。
  その結果、177億2,600万円にのぼる消費税額を追徴した。また、そのうちの1,012件は虚偽の申告により不正に還付を受けていたことも判明している。前事務年度と比べると、調査件数は10.6%、不正件数も13.1%それぞれ減少しているものの、調査による追徴税額は6.1%増加しており、国税当局が消費税不正還付に積極的に取り組んでいる効果がうかがえる。
  消費税不正還付の事例をみると、輸出取引について消費税が免税となる取扱い(輸出免税制度)を悪用し、国内取引を輸出取引に仮装するなどして不正に還付金を受け取るケースが見受けられたという。例えば、リサイクル業を営んでいたA法人は、帳簿等を改ざんし、国内売上を輸出免税売上に仮装する手口で消費税を不正に還付する申告を行っていたことが報告されている。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2010.11.22
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