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2012年の介護保険改革の方向性
  2012年度の介護保険改革に向けて、厚生労働省がまとめた原案が、11月19日に発表された。介護保険導入から10年、前回2005年度の改革からも5年がたち、高齢化はさらに進展し、単身および高齢者のみの世帯も急増している。こういった中、介護保険の役割はますます重要になるが、課題も山積みである。
●  財政健全化するための方策
  高齢者の増加と、介護保険が認知されたことから、2000年に149万人だった利用者の数は、2009年には384万人と2倍以上に増えている。今年厚生労働省が行ったアンケートによると約6割の人が介護保険を評価しており、日本に欠かせない制度になったといえるだろう。
  とはいえ、利用者の増加により介護保険からの給付も増えたことで、財政面の厳しさは増している。制度維持のためには、介護保険料を引き上げるか、自己負担割合を引き上げるか、あるいは給付を制限することが必要になってくる。
  ひとつの解決策として検討されているのが、健康保険(組合)や共済組合から徴収する介護保険料の計算方法の変更である。加入者の人数に応じて介護保険料を徴収する現在の計算方法に、総報酬額に応じた負担という考え方を取り入れる、というものだ。つまり加入者の数が同じであっても、高所得者が多い健保組合や共済組合ほど負担額が多くなるということだ。これにより、平均総報酬額が多い、つまり高所得者が多い健保組合や共済組合の負担額は増え、平均総報酬額が少ない協会けんぽの負担額は減ることになる。
  このほか、
  (1)  介護サービス利用時の自己負担を、高所得者については1割から2割に引き上げる。
  (2)  現在無料のケアプランの作成費を月500円から1,000円とする。
  (3)  利用者負担においては本人の所得(収入)だけでなく、資産の有無や同居していた家族の負担能力なども考慮する。
などが検討されている。
●  在宅介護を可能にするサービスの導入やしくみの構築
  また運用面では、地域で生活を続ける要介護高齢者を支える体制の整備に重点を置いて、次のような対策が検討されている。
  ・  24時間対応の定期巡回・随時対応サービスの創設
  ・  前回の改革で導入された小規模多機能サービスの推進
  ・  医療サービスとの連携
  ・  高齢者や要介護者に配慮した住まいの整備
  ・  認知症高齢者への支援体制の強化
  ・  介護を担う家族への支援体制の強化
  上記以外にも、要介護度が低い要支援者への介護サービス給付の見直し(自己負担割合の引き上げ、介護保険の対象外とするなど)や、サービスの質の確保と向上、介護を担う人材の確保、質の高い人材の育成、などが検討課題とされている。
  以上見てきたように、高齢者の生活向上のためには、医療や住居、見守りや配食など介護保険以外の分野との連携も欠かせないのである。2010年の高齢化率(全人口に対する65歳以上の人口の割合)は23.1%。日本はまもなく、4人に1人が高齢者という社会になる。財源に限りがある中、高齢者や要介護者をどのように支えていったらいいか。2012年度の改革の方向性を見守っていきたい。
参考:第36回社会保障審議会介護保険部会資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000wspu.html
(CFP® 山田 静江)
2010.11.29
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