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税務調査日数が長期化傾向〜東京税理士会の調査
●  調査件数はここ3年間では最少の平均1.7件
  東京税理士会(山川巽会長)が1968年からほぼ毎年行っている「税務調査・書面添付アンケート調査」の2010年度結果がまとまった。税務調査について、税理士法第34条規定の関与税理士への「調査の通知」の実施状況、調査の内容、調査担当官の対応および税務行政に対する意見・要望などを同会会員に聞いた。支部別に6,000会員を無差別抽出、1,474会員から有効回答を得た(有効回答率24.6%)。
  調査結果によると、税務調査件数は2,516件で、有効回答数からみて1回答者(法人)平均で1.7件(前回2.9件)の調査があったことになり、ここ3年間では最少だった。また、調査件数なしの回答は676通あり、うち関与先に調査がなかったのが590件。その他関与先がない74件、不明12件。法人税調査は2,002件(前回3,136件)あり、うち所得税の確定申告期に行われたものは98件で、4.9%(前回比0.1%減)となっている。
  調査件数2,516件から調査通知について無記入・不明の100件を引いた2,416件のうち、事前通知のあったものは2,272件で94.0%(前回比4.0%減)、このうち調査通知が税理士にあったものは2,080件で86.1%(同8.0%減)だった。調査通知については、事前通知がほぼ行われているといえるが、引き続き税理士法第34条の規定の趣旨を徹底し、完全励行するよう、税務当局に強く要請すべきであろう、としている。
●  「申告是認」は24.5%
  調査日数について、「1日」で終了したものは、日数が明記してあるもの2,357件のうち、516件で21.9%(前回比1.9%減)、「2日」で終了したものは、1,125件で47.7%(同4.5%減)と、合計で約7割となっている。一方、「3日〜4日」が431件で18.3%(同1.6%増)、「5日以上」が285件で12.1%(同4.8%増)と、税務調査日数は長期化傾向にある。特に5日以上の割合は過去3年間と比べもっとも高い数字となった。
  調査結果については、内容記入のあった2,417件のうち、「申告是認」が593件で24.5%(前回比1.0%減)、「修正申告」は1,759件で72.8%(同0.6%減)、「更正」は65件で2.7%(同1.6%増)。また、修正申告及び更正1,824件のうち、重加算税処分となったものは281件で22.8%(同1.1%増)だった。今回の調査で、申告是認のうち書面で通知があったものは、59件で9.9%(同1.6%増)と、ここ3年間横ばい状態が続いている。
●  書面添付の割合は12.1%
  また、今回の調査では初めて書面添付制度について独立したアンケートを実施したところ、有効回答1,310通のうち、回答件数は1,201件あり、書面添付しているものは145件で12.1%、書面添付していないものは1,056件、87.9%であり、添付割合は10%台前半だったことが分かった。
  税目別の書面添付の有無をみると、法人税(消費税含む)の総申告件数6,365件のうち書面添付した件数は2,412件で37.9%。所得税(消費税含む)の総申告件数4,782件のうち書面添付した件数は544件で11.4%。相続税・贈与税の総申告件数270件のうち書面添付した件数は63件で23.3%。法人税申告における添付割合が高いが、同会では所得税、相続税等についても添付割合を高められるよう、引き続き普及推進に努めるとしている。
  書面添付をしている理由としては、(1)業務品質の向上、(2)税務調査の省略化、(3)業務上の責任範囲を明確化、など。反対に添付していない理由としては、(1)添付する効果が不明、(2)時間や労力がかかり煩雑、(3)科目内訳及び概況書で十分であった、などが挙げられた。その他、「以前添付したことがあったが、関連資料の提出を求められ、かえって多くの時間を費やすことになった」などの回答があった。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2010.12.06
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