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2011年度税制改正における個人所得課税、資産課税の見直し
●  給与所得控除は給与収入1,500万円超で頭打ち
  2011年度税制改正においては、給与所得控除や退職所得課税、扶養控除など個人所得課税が大幅に見直される。給与所得控除には上限が設定され、その年中の給与収入が1,500万円を超える場合の控除額は245万円で頭打ちとなる。また、給与収入4,000万円を超える高額な法人役員等の場合は、控除額の2分の1を上限とし、2,000万円から4,000万円の間は、控除額の上限を4分の3とする部分も含め調整的に徐々に控除額を縮減する。
  具体的には、
(1)  給与収入が2,000万円を超え2,500万円以下の場合は、245万円から2,000万円を超える部分の12%相当額を控除した金額
(2)  給与収入が2,500万円を超え3,500万円以下の場合は、185万円
(3)  給与収入が3,500万円を超え4,000万円以下の場合は、185万円から3,500万円を超える部分の12%相当額を控除した金額
とされる。役員等には、国会議員や地方議会議員、国家公務員、地方公務員も含まれる。
  給与所得控除を見直す一方で、特定支出控除を見直す。特定支出の範囲に、
(1)  職務の遂行に直接必要な弁護士、公認会計士、税理士、弁理士などの資格取得費
(2)  職務と関連のある図書の購入費、職場で着用する衣服費、職場に通常必要な交際費や職務上の団体の経費(勤務必要経費)を追加する。また、特定支出控除の適用判定の見直し(給与所得控除の2分の1部分と比較)を行う。
●  勤続5年以下の法人役員の2分の1退職控除は廃止
  退職所得課税については、勤続年数5年以下の法人役員(法人役員に相当する公務員・議員を含む)に係る退職所得の課税方法について、退職所得控除額を控除した残額の2分の1とする措置を廃止する。
  そのほか、23〜69歳の親族を適用対象とする成年者扶養控除は、年収が568万円(所得400万円)以上の納税者は適用を廃止する。ただし、障害者や65歳以上の高齢者、学生については引き続き扶養控除の対象とする。
  個人所得課税の改正は、2012年分以後の所得税について適用する。
●  相続税の最高税率を50%に引き上げ、基礎控除は圧縮
  資産課税の見直しでは、相続税の最高税率を55%に引き上げ、基礎控除を圧縮するなどの増税となる。相続税の税率構造について、最高税率を55%(現行50%)に引き上げ、税率区分を現行の6段階から8段階にする。また、基礎控除について、定額控除を3,000万円(同5,000万円)に、法定相続人1人あたりの比例控除額を600万円(同1,000万円)にそれぞれ引き下げる。
  死亡保険金の相続税の非課税枠についても、現行では法定相続人1人あたり500万円だが、非課税枠を利用できる対象を法定相続人のうち、未成年者、障害者、相続直前に被相続人と生計を一にしていた者に限定し、同居していない法定相続人は除外する。こうした見直しに伴い、未成年者控除(現行:20歳までの1年につき6万円)および障害者控除(同:85歳までの1年につき6万円)について、ともに控除額を10万円に引き上げる。
●  贈与税は生前贈与促進のため税率等を緩和
  一方、贈与税については、若年世代への早期資産移転をより一層促進するため、20歳以上の子や孫への贈与を対象に税率構造を緩和する。最高税率は4,500万円超で55%(現行1,000万円超で50%)に引き上げるが、税率区分を現行の6段階から8段階にし、3,000万円以下の贈与は税率が引き下げられる(200万円以下は同じ)。それ以外の贈与を対象とした税率構造も、税率区分が8段階となり、1,000万円を超える贈与が細分化される。
  さらに、親子間の生前贈与を促す相続時精算課税制度についても、(1) 受贈者の範囲に、20歳以上の孫(現行:推定相続人のみ)を加え、(2)贈与者の年齢要件を60歳以上(同:65歳以上)に引き下げるなど、適用要件を拡充する。これらの見直しについての適用時期については、相続税および贈与税は2011年4月1日以後から、相続時精算課税制度は2011年1月1日以後からとなる。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2010.12.20
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