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また増えた国民医療費
●  また過去最高となった国民医療費
  去る11月、厚生労働省より「平成20年度 国民医療費の概況」が発表されている。
  これによると、
(1)  平成20年度の1年間の国民医療費は34兆8,084億円、前年度の34兆1,360億円に比べて6,725億円、2.0%の増加。
(2)  人口ひとり当たりに換算すると27万2,600円であり、前年度の26万7,200円に比べ、2.0%の増加。
(3)  国民所得(約352兆円)に対する比率は9.90%と、これも前年度の9.02%に比べて増加。
  以上のように、「年間の国民医療費」「人口ひとり当たり国民医療費」「国民所得に対する比率」のいずれも前年度より増加し、それぞれ過去最高となっている。
  ちなみに、平成20年度の一般会計予算は約83兆円であり、国民医療費の額は、その4割強に相当するといえば、その膨大な金額のイメージも湧くのではないだろうか。
●  年次推移をみてみると
  
年次 国民医療費 人口ひとり当たり
国民医療費
国民医療費の
国民所得に対する比率
昭和63年度 18兆7,554億円 15.3万円 6.20%
平成10年度 29兆5,823億円 23.4万円 8.02%
平成20年度 34兆8,084億円 27.3万円 9.90%
  過去最高となった国民医療費だが、年次推移をみてみると、直近の20年(昭和63年度〜平成20年度)では1.8倍以上に膨れている。人口ひとり当たりについても15.3万円から27.3万円へと約1.8倍となっている。
  中間の平成10年度からの推移もご覧のとおりであり、次年度以降の国民医療費についても「過去最高」の文字が躍るであろうことが容易に想像がつく。
●  高齢者医療費への対策が急がれる
  年齢別にみてみよう。
  
年齢階級 国民医療費推計額 構成割合 人口ひとり当たり
国民医療費
65歳未満 15兆8,085億円 45.4% 15.9万円
65歳以上
(75歳以上)
18兆9,999億円
(10兆9,711億円)
54.6%
(31.5%)
67.3万円
(83.0万円)
  高齢化が進んでいる日本ではあるが、それでも65歳以上の高齢者の人口占率は2割台前半である。その65歳以上の国民医療費の構成割合は5割を超えている。人口ひとり当たりについては65歳未満が15.9万円であるのに対し、65歳以上は67.3万円と4倍強となっている。後期高齢者医療制度の被保険者となる75歳以上に関しては、上の表をご覧いただくだけでおわかりになるだろう。
●  後期高齢者医療制度の仕組みはなくなるが…
  ご存じのとおり、後期高齢者医療制度は平成25年3月をめどに廃止され、新制度へ移行することが議論されている。
  しかし、受け皿のみを変えただけでは、膨大な医療費の負担を「誰に押し付けるのか」の議論でしかなく、根本的な解決へとはなかなか進まない。
  医療・介護を含め、社会保障審議会等の議事録をみても、現場の予算拡大への切実な声が、保険者等の負担削減の主張の前にかき消され、良くも悪くも「予算ありき」でしか物事が進まない実態がうかがえる。
  当コラムの読者は保険業界の方々が多いと思われるが、予算策定に四苦八苦している霞が関の方々に代わって、民間ならではの知恵やアイデアをもって、身動きのとれなくなってしまった公的医療制度の改革を提言してほしいものである。
厚生労働省:平成20年度国民医療費の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/08/index.html
2010.12.27
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