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「乳腺線維腺腫」告知における留意点
●  乳腺線維腺腫とは
  乳腺線維腺腫は「痛みを伴わない乳腺の良性腫瘍」で、上皮組織および繊維性結合組織の混合腫瘍です。近年の研究(Clonality解析)では、腫瘍というよりはむしろ小葉の過形成(細胞異型や構造異型はなく、正常の組織より細胞増殖が進んだ状態)であることが明らかにされています。
  20〜30代の女性に多く見られ、妊娠時に巨大化することもあります。年齢と共に自然退縮するので40〜50代での初発はまれです。片側に1個のことが多いのですが、まれに複数できたり両側性に発生したりすることもあります。
  病理学的にはさらに細かく分類され、細胞診だけではがんとの鑑別が困難な例もあるので、告知される際にはお客さまから詳細に告知をいただく必要があります。
●  検査
・  触診:限局性・表面平滑・境界明瞭かつ可動性のある腫瘤で圧痛はありません。
・  マンモグラフィー:境界明瞭かつ均一な陰影です。
・  エコー:境界明瞭かつ内部エコーレベルが均一な腫瘤・辺縁は平滑です。
・  穿刺吸引細胞診:組織ではなく、細胞・分泌物を細い針で吸引します。
・  針生検:細胞診より少し太い針で組織を採取します。
・  マンモトーム生検: マンモグラフィーやエコーで確認しながら直径約4mmの太い針で病変部周辺を穿刺、組織を吸引します。
・  摘出生検:診断と治療も兼ね周辺の正常組織も一緒に切除します。
●  経過
  乳腺線維腺腫は大部分が2cm内外の腫瘤で、増大しても3cmの大きさになると増殖が止まり、そこから乳がんが発生することもほとんどありません。よって通常は半年〜年に1度の経過観察だけで薬物療法等はありません。
  症例の1/3〜2/3は年齢と共に自然退縮し、閉経期前後では1cm前後のポップコーン形の石灰化腫瘤影としてマンモグラフィーで検出されます。
  3cmを超えるもの、または3cm以下でも、年齢が40歳以上で葉状腫瘍等の疑いがある場合には、除外診断も兼ねて摘出切除することもあります(局所麻酔で30分程度の日帰り手術です)。再発の可能性もあるので、周辺の正常組織も含めて切除します。
●  ご契約をいただく際には
  鑑別疾患である葉状腫瘍や乳がん等を否定できるかがポイントです。
  お客さまから「乳腺線維腺腫」と告知をいただいても、検査の内容や、手術ありで術式が乳房全摘術や乳房温存術(乳房扇状部分切除、乳房円状部分切除、腫瘤摘出術)とあった場合には、悪性腫瘍として査定される可能性があります。入院期間が長い場合も同様です。
  お客さまが若年で確定診断後の経過が長く、大きさが小さいものは無条件での加入も可能と思われますが、40歳以降で経過が長いものでは、大きさにより入院保険については部位不担保などの条件付きでの加入となるかもしれません。確定診断後の経過が短いものや大きさが不明なものは、条件付き〜延期となる可能性もありますので、診断日の告知も重要です。
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2011.01.11
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