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労働時間の長さは、仕事の性質や上司の性質による影響が大きい
●  仕事や役割に対する目標設定の高さが労働時間を長くする傾向
  独立行政法人 労働政策研究・研修機構は、雇用労働者の労働時間と意識等について調査するため、平成22年2月に民間調査会社の郵送モニターを利用してアンケート調査を実施した。
  今回は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(平成20年)から、管理職と非管理職の性別および年齢階層別分布を参考に合計1万人に配布し、管理職、非管理職合計で8,761人(87.6%)から得た回答をまとめて、このたび発表した。
  調査結果によると、自分の仕事や上司の性質が労働時間に影響し、仕事や役割に対する目標設定の高さ(まじめさ)が労働時間を長くする傾向を読み取ることができる。
  上司からの厳しい指導が多い職場で働く従業員は、疲労とストレスがたまり生産性が悪くなっている可能性が高く、それらがさらに労働時間を長くしている原因のひとつにもなっている。いずれにしても職場環境は、常に改善し続けなければならないものであり、このような調査結果も新しいヒントとして受けとめて、できるものから取り組んでみてはいかがだろうか。
●  残業の理由のトップは、「仕事量が多いから」
  調査結果によると、所定労働時間を超えて働く理由の第1位は、管理職、非管理職とも「仕事量が多いから」(管理職63.9%、非管理職62.5%)となった。第2位は「予定外の仕事が突発的に飛び込んでくるから」(管理職36.0%、非管理職31.2%)、第3位は、管理職は「自分の仕事をきちんと仕上げたいから」(30.9%、非管理職は24.1%)であったが、非管理職は「人手不足だから」(30.2%、管理職は23.7%)となった。
  このような残業の理由について質問すると、大体同じような結果になるのはどの調査でも一緒だが、今回のような管理職と非管理職で分けての調査は、その違いが一部にあらわれるので大変参考になる。管理職は「仕事をきちんと仕上げたいから」という回答が非管理職に比べて多かったが、これこそ上司の性質が部下へも大きく影響しているものではないかと思われる。
●  長時間労働対策は、早めに具体的なアクションを起こすことが重要
  仕事の性質が「取引先や顧客の対応が多いこと」「会議や打ち合わせが多い」などの場合は、管理職、非管理職ともに労働時間が長くなる傾向にある。また「会社以外の場所でも仕事ができる」は、非管理職においては労働時間が長くなる原因になっていることは明らかである。
  次に上司の性質については、管理職も非管理職も「必要以上に資料の作成を指示する」「必要以上に会議を行う」「仕事の指示に計画性がない」「指示する仕事の内容が明確でない」「終業時刻直前に仕事の指示をする」「残業することを前提に仕事の指示をする」「社員間の仕事の平準化を図っていない」「つきあい残業をさせる」「残業をする人ほど高く評価する」の9項目が労働時間を長くする原因となっているので、このあたりを中心に自社および自分に置き換えて分析してみると改善できる点はあるのではないだろうか。
  いずれにしても長時間労働対策を意識して積極的に取り組んでいる企業も増えている。ノー残業デーや退社時刻の際の終業の呼びかけ、長時間労働の人への面談や上司への注意などは、比較的簡単にできることなので、すぐに始めて徐々に職場環境を改善していきたいところである。

参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「仕事特性・個人特性と労働時間」調査結果
http://www.jil.go.jp/press/documents/20101207.pdf
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2011.01.11
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