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2011年度税制改正大綱、法人実効税率5%引下げなど決定
●  中小法人の軽減税率を15%に引下げ
  政府は12月16日、2011年度税制改正大綱を閣議決定し公表した。柱は国際競争力を高めるための法人税率の軽減だが、国税・地方税を合わせた法人実効税率を5%引き下げることで決着がついた。国税は法人の基本税率を現行の30%から25.5%に引き下げ、地方税は法人住民税の実効税率を0.87%引き下げる。また、中小法人の軽減税率について、特例による税率を15%(現行18%)に、本則税率を19%(同22%)に引き下げる。適用は、法人の2011年4月1日以後に開始する事業年度からだ。
  中小法人の軽減税率の引下げに伴い、中小企業等基盤強化税制を廃止するほか、法人実効税率引下げの財源確保の一環として、減価償却制度の見直しがある。現行の減価償却資産の定率法の償却率は、定額法の償却率(1/耐用年数)を2.5倍した数、つまり1年目で取得価額の25%を償却できるが、これを2.0倍した数、20%に圧縮する。適用は、2011年4月1日以後に取得する減価償却資産からとなる。
●  雇用促進税制・環境関連投資促進税制の創設
  法人実効税率5%引下げに必要な財源約1兆5,000億円を賄うため、法人課税、個人所得課税、資産課税は全体的に増税色の濃いものとなった。
  財源の絡みでは欠損金の繰越控除制度の見直しがあり、控除限度額をその事業年度の繰越控除前の所得金額の80%に制限し、欠損金の繰越期間を9年(現行7年)に延長するが、中小法人は現行の控除限度額を認める。
  また、貸倒引当金制度は、銀行や保険会社、中小法人に限定されるので、中小企業に影響はない。ただ、研究開発減税は、研究開発費の税額控除の限度額が法人税額の30%から20%に圧縮し、延長しないことが決まっている。
  ほかでは、雇用促進税制や環境関連投資促進税制の創設がある。雇用促進税制は、その年度中に従業員のうち雇用保険一般被保険者の数を10%以上かつ5人以上(中小企業者等は2人以上)増加させるなどの要件を満たす法人について、増加1人あたり20万円の税額控除ができる。ただし、当期の法人税額の10%(同20%)が限度。適用は、2011年4月1日から2014年3月31日の間に開始する各事業年度となる。
  また、環境関連投資促進税制は、エネルギー起源CO2排出削減等に効果が見込まれる設備等に関する特別償却制度(取得価額の30%、中小企業者等は取得価額の7%の税額控除との選択)だ。ただし、税額控除については当期の法人税額の20%を限度とし、控除限度超過額については1年間の繰越しができる。適用は、2011年4月1日から2014年3月31日の間に取得した対象設備等を1年以内に国内の事業に使用した場合となる。
●  給与所得控除は給与収入1,500万円超で上限設定
  個人所得課税では、給与所得控除について、給与収入1,500万円超で一律245万円の上限を設け、同4,000万円を超える法人役員は控除額の2分の1の額を上限とし、2,000万円から4,000万円の間は徐々に控除額を縮減する。退職金については、勤続年数5年以下の法人役員は2分の1課税を廃止する。成年扶養控除については、障害者や65歳以上の高齢者、学生を対象とする以外は、合計所得400万円以上の納税者には適用しない。
  資産課税では、相続税の基礎控除を「3,000万円(現行5,000万円)+600万円(同1,000万円)×法定相続人数」に引き下げる。税率構造については、最高税率を55%(同50%)に引き上げ、税率区分を現行の6段階から8段階とする。死亡保険金に係る非課税枠については、500万円に乗ずる法定相続人を、未成年者、障害者、相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた者に限定する。
  ただし贈与税については、若年世代への早期資産移転を促進するため、暦年課税について、20歳以上の子や孫を受贈者とする贈与税の税率構造を緩和する。相続時精算課税制度も、受贈者に20歳以上の孫を追加するとともに、贈与者の年齢要件を60歳以上に引き上げる。
  そのほか、金融証券税制では、上場株式の配当・譲渡等に係る10%軽減税率の適用時期を2年延長し、2014年1月から20%本則税率に戻ることになった。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2011.01.11
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