>  今週のトピックス >  No.2173
上場企業の正社員の約4割が社内で「閉塞感」を感じている
●  経営が比較的安定している上場企業の社員でも「閉塞感」
  組織・人事コンサルティングサービスを提供するクレイア・コンサルティング株式会社は、ビジネスパーソン1,000 名を対象としたインターネットの意識調査を毎年実施しており、このたび結果が公表された。
  上場企業に勤務する社員を対象に、従業員満足度調査の項目に沿って意欲や満足の状態を聞くとともに、特に社内の「閉塞感」をテーマにした質問を加えて調査を行ったもので、上場企業の正社員においても37.1%が社内で「閉塞感」を感じていることが判明した。
  日本経済の低迷の中で閉塞感が蔓延しているが、企業で働く従業員も同様であり、社会が一体となって閉塞感を打破していくためにもその構造的要因などを分析している今回の調査は有益である。
●  閉塞感を感じる社員の72.8%が、チャレンジ意欲を持てず
  調査結果によると経営が比較的安定している上場企業においても、社内で閉塞感を感じる社員が約4割にのぼることが明らかになった。閉塞感を抱えた社員は将来に対して希望を感じることができず、新たなことにチャレンジしようという前向きな意欲が阻害され、転職への意向も高いことが読み取れる。
  閉塞感を感じている社員の72.8%が「今の仕事では、新しいことに挑戦したり、新しいものを生み出そうとする気持ちがわきにくい」と答えており、閉塞感を感じていない人(12.8%)と比べるとその差は大きい。また閉塞感を感じている人は意欲だけでなく、「新しいテーマにチャレンジする機会が減っている」と回答している割合も多く、負のスパイラルに陥ってしまっており、かなり厳しい状況にあるといえる。
  また、回答者全体では4人に1人(25%)が転職の意向を示しているが、特に閉塞感の高い人はほぼ半数が転職意向を示しており、企業にとっては望ましくない状況にあることがうかがえる。
●  将来のキャリアへの不透明感とポスト不足が要因のひとつ
  閉塞感を生み出す構造的な要因について今回の調査では、将来のキャリアへの不透明感とポスト不足をその理由のひとつとしてあげている。実際に上場企業の現場では、組織のフラット化によりポストは少なくなり、同じ職位に滞留している先輩たちの姿を見ていると、将来の自分に置き換えて考えてしまうのは当然のことである。
  企業自体の成長が伸び悩んでいる中で長期的な視点で計画を立てることは難しく、また積極的に事業を展開できない中では、新しいポストも生まれることは少なく、将来への漠然とした不安だけが残るのも無理はない。
  閉塞感を生み出すもうひとつの構造的な要因は、組織内におけるコミュニケーション不全にあるといえる。組織の縦割化により社員同士のヨコの関係のコミュニケーションは少なくなり、上司から部下への指示命令というタテの関係のコミュニケーションにも不満が高まっているのが現状である。コミュニケーションの活性化は、閉塞感を吹き飛ばす可能性もあり、このような問題をどのように解決していくかは、企業が生き残りをかけて真剣に取り組んでいく必要があるといえるだろう。
参考: クレイア・コンサルティング株式会社 「ビジネスパーソン1,000名を対象とした意識調査」 http://www.creia.jp/info/press/101106.html
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2011.01.24
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