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公的年金、2009年度は1.8人で1人を支える
  2011年1月25日付けの日本経済新聞朝刊1面の記事には驚いた。年金受給者の急増と年金加入者の減少の結果、2009年度は現役1.8人が受給者1人を支える構図になったという。年金の給付額合計も10年前の3割増。団塊世代の本格的な年金受給が始まる前に、この状態になったことにショックを受けた関係者は多いのではないだろうか。
●  公的年金は賦課方式
  ご存じのとおり、日本の年金制度には大きく分けて、自営業者等が加入する「国民年金」、会社員が加入する「厚生年金」、公務員が加入する「共済年金」がある。
  給付の面で見ると、3つの年金制度に共通の「基礎年金」があり、それに加えて「報酬比例部分」の年金が上乗せされるしくみである。原則65歳から支給される老齢給付で見てみると、国民年金加入期間については「老齢基礎年金のみ」だが、厚生年金加入期間は「老齢基礎年金+報酬比例部分(老齢厚生年金)」、共済年金加入期間は「老齢基礎年金+報酬比例部分(退職共済年金)」となっており、会社員や公務員などに手厚い制度となっている。
  これらの公的年金制度は、個人年金保険のように自分が支払った保険料を将来受け取るしくみではなく、現役世代が支払った保険料で受給額をまかなう「賦課方式」が基本となっている。そのため、支え手である加入者と受け手である受給者とのバランスが崩れると、制度運営が難しくなる。
  不況や製造部門等の海外への移転等によって、企業が正社員の採用を抑えていることも、厚生年金加入者の減少に拍車をかけている。また国民皆保険が原則とはいえ、不安定な雇用状況の中では、国民年金の保険料を納めない人が増えるのも仕方ないといえる面もあるだろう。
●  さらなる支給額増で給付開始年齢引き上げか
  2009年度公的年金の支給総額は、団塊の受給が本格化していないにもかかわらず、50兆円を超え、GDPに対する割合も1割を超えたという。団塊世代が満額の年金をもらいはじめる2012年度以降、支給額はさらに拡大し、2015年度には59兆円、2025年には65兆円に達する見込み。医療保険や介護保険の給付増も見込まれる中、高齢者への社会保障費が、財政支出の大半を占めるようになるかもしれない。
  年金財政の悪化を受けて、現在65歳の年金支給開始年齢を引き上げる議論も出てきているが、それでは後の世代に負債を押し付けることにならないだろうか。年金より少ない給与しかもらえない若年世代が多く存在する現在の状況では、高齢者が現役世代より弱者とは言えないだろう。高齢者の経済的負担を大幅に増やすことは無理にしても、相応の負担を求める政策に期待したい。票田となる高齢者にこれ以上媚びる政策を続ければ、日本経済はさらに悪化するのではないだろうか。
(山田 静江 CFP®)
2011.01.31
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