>  今週のトピックス >  No.2181
新卒者に求められる「論理的思考力」
●  「熱意・意欲」を重視する企業の減少
  公益社団法人経済同友会が昨年10月に行った「採用と教育に関するアンケート」で、企業が採用時に新卒者に求める資質に関し「論理的思考力」や「問題解決力」を重視する姿勢に徐々に変わってきていることが分かった。この調査は、1997年以降2年ごとに行っており、今回は経済同友会所属の全国の846社に対して実施し、230社から回答があった。
  「新卒の採用選考の際にビジネスの基本能力等として特にどのような能力を重視していますか?」という質問をグループ(学歴別)ごとにしたところ、いずれのグループでも「熱意・意欲」がトップではあることに違いないが、それらを重視する企業割合は減少している。
  一方で「論理的思考力」を求める企業が全グループで4位と前回に比べて上昇し、また「問題解決力」も前回に比べて重視する企業が多くなっている。
●  出身校不問の企業は、まだまだ少数派
  大学新卒者の採用について「出身校不問(大学名を聞かずに筆記・面接試験を行う)ですか?」という質問に対して、「全面的に採用している」が24.2%、「部分的に採用している」は5.5%という結果となった。一方で「採用していない」は、67.6%とまだまだ出身校不問の採用試験制度が広まっていないことが明らかになった。実際に2年前の調査に比べて、今回のほうが「採用していない」という企業割合が8.3ポイントも増えている。
  この調査結果が、厳しい就職難の時期と関連しているかどうか定かではないが、企業側も採用に関しては、さまざまな視点で考えていく必要があり、その中で学歴不問の制度を導入してみるのもひとつの方法ではないだろうか。
●  既卒者への対応、「選考の際の評価に影響する」55.7%
  既卒者への対応についての質問では「選考の際の評価に影響する」が55.7%で、「選考の際の評価に影響しない」の34.2%を大きく上回っている。既卒者問題は、取り扱いに差別しないようにしてほしいというのが政府の願いではあるが、まだまだアンケートの中には 「既卒者は新卒として採用しない」「会社としては特に定めていないが、既卒者の実績はない」という回答もあり、既卒者には厳しい現状が読みとれる。
  このような背景を受けて国は、昨年11月に「青少年雇用機会確保指針」の改正により、3年以内既卒者について新卒枠で応募受付をするように企業に求めた。指針の改正がどれだけ効果があるか分からないが、3年以内新卒でも応募が可能になれば門戸が広がるという意味では望ましいことである。大手企業も次々と厚生労働省の求める指針に従って3年以内既卒者について新卒枠で応募受付することを発表しており、他の各企業も多様な人材を採用するチャンスと考えて既卒者を採用するのも良いのではないだろうか。
参考: 公益社団法人 経済同友会「企業の採用と教育に関するアンケート調査」
http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2010/pdf/101222a.pdf
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2011.02.07
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