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大相撲、本場所・巡業中止で相撲協会は大幅収入減
  八百長疑惑で揺れている相撲界だが、大阪で開催される予定だった大相撲春場所の中止がついに決まった。本場所が中止になるのは、昭和21年以来という。長らく国技として国民に親しまれてきた大相撲だが、相撲部屋での暴行死亡事件、薬物問題、野球とばくに引き続いて起きた不祥事ということもあり、根っからの大相撲ファンでさえ見限りたくなる気分であろう。
  年内の地方巡業もすべて中止が決まり、本場所も当面は再開が難しいと思われるが、相撲協会の「ふところ」はどう影響を受けるのか、見てみよう。
●  本場所と巡業で年間約89億円の収入
  相撲協会の収入の柱は、本場所開催や巡業である。入場料収入に加えて、放映権料や相撲関連グッズの販売なども期待できる。日本相撲協会の平成21年の財務諸表を見ると、本場所事業収益(収入)は86億724万4,821円で、巡業事業収益(収入)は2億8,096万8,152円。合計で88億8,821万2,973円と、経常収益(収入)の約85%を占める。
  すでに中止が決まっている巡業に関しては収入ゼロとなり、本場所についても春場所だけの中止でも14〜15億円の減収が見込まれるため、現時点で収入は17億円以上の減少。仮に夏場所から再開できても、客足が戻るには時間がかかると思われる。受取寄付金が3億5,846万円あるが、スキャンダルの影響で減るのではないのだろうか。また、本場所や巡業に関連したキャンセル料や補償料等の支払いが発生することから、損失は数十億円に達するかもしれない。
●  相撲協会の資産は約505億円
  しかしながら、相撲協会には約505億円の資産がある。国技館の土地・建物だけでなく金融資産も潤沢だ。流動資産としての現金預金は約39億円だが、各種引当資産としての預金等が約324億円もある。負債は約56億円あるがその大半は退職給付引当金や役員退職慰労引当金という、いわば身内に対する債務である。引当金はそれぞれ目的があるので全部使ってしまうわけにはいかないが、いざというとき流用できる「お金」があるのは強い。財政面だけでみれば、収入減によりすぐに破綻することにはならないと思われる。
●  関連業者への影響
  財務諸表を見る限り、相撲協会本体は盤石な財政基盤を持っているようだ。しかし相撲界を支える関連業者には零細な事業者もあり、より大きな打撃を受けることになる。突然の中止となった大阪では、ホテルや飲食店なども大幅な減収となるだろう。
  今年の初場所で、生まれて初めて升席で観戦した。白鵬をはじめとした力士の美しさ、力強さに感激したばかりだったので、八百長疑惑は非常に残念である。問題をきちんと解決し再開されることを望む。
(CFP® 山田 静江)
2011.02.14
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