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「多発性硬化症」告知における留意点
●  多発性硬化症(MS、たはつせいこうかしょう)とは
  神経線維の構造は電線に似ていて、神経(例えると電線)の周りをビニールの絶縁体のような役目をする髄鞘(ずいしょう)が被っています。この髄鞘が炎症により壊れて中の線がむき出しになったような状態を「脱髄(だつずい)」といいます。多発性硬化症は、中枢神経系の脱髄疾患の一つです。
  多発性硬化症は、自己免疫反応による髄鞘の炎症が脳や脊髄内に空間的・時間的に多発し、再発と好転を繰り返す疾患で、難病にも指定されています。若年成人に多く、平均の初発年齢は30歳前後です。また女性に多い傾向があります。
●  症状と経過
  脱髄(だつずい)が起きる場所によって症状がさまざまなのがこの病気の特徴です。
  視神経の症状:視力低下、視野欠損、眼球痛などの症状が比較的多い
  脊髄の症状:手足に麻痺やしびれ、感覚低下、排尿・排便障害・自律神経障害
  脳の症状:複視、呂律障害、顔のしびれ、運動失調、小脳失調、けいれんなど
  多くは再発と好転を繰り返しながら慢性に経過していきます。人によって異なりますが、年齢とともに再発する回数は減っていきます。症状の軽い例では比較的予後良好ですが、重症の場合では急速に進行し、予後不良となることもあります。発病や再発の誘因としては感染症、過労、ストレス、出産後などがあります。
●  原因
  はっきりとした原因はわかっていませんが、自己免疫説が有力です。本来、外敵から身を守るはずの免疫系が、脳や脊髄の髄鞘に存在する自己のタンパクを攻撃した結果、髄鞘が傷害されて脱髄を生じ、麻痺やしびれなどの神経症状を引き起こすという説です。
●  治療
  ステロイドパルス療法:数日間連続してステロイドを点滴し、その後ステロイド内服します。急性期を過ぎたらリハビリテーションを行います。
  血漿交換法:ステロイドパルス療法が著効せず、麻痺などの後遺症が残存する場合などに行います。
  インターフェロン:再発予防に有効とされています。
  免疫抑制剤:慢性進行例には使用されることもあります。
  その他の対症療法として薬物治療を行います。けいれんに対してはカルマバゼピン、手足のつっぱりには抗痙縮剤、排尿障害にはプロピベリン等の泌尿器用剤を使用します。
●  ご契約をいただく際には
  死亡保険に関しては、症状が消失した後の経過年数によりますが、症状が単独で軽症と判断できるような場合には、保険料割増等の条件付きの可能性が高くなりますが加入できる可能性があります。
  多発症状のある方の場合には、再発なども考慮して、延期となるか、加入できても保険料割増等の条件付きとなるでしょう。平均の初発年齢は30歳前後ですので年齢の高い方の発病は再発である可能性が高いと判断されます。入院保険については経過年数にかかわらず加入が難しい会社が多いと思われます。
  多発性硬化症は、症状や経過がさまざまですので、お客さまから告知をいただく際には、部位や治療内容、経過年数等、詳細を告知されることをおすすめします。
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2011.02.21
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