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「国の借金」と「国民負担率」
●  昨年12月末の「国の借金」、過去最大の919兆円
  財務省がこのほど公表した2010年12月末時点での国債や借入金などを合計した「国の借金」は919兆1,511億円となり、前回発表の2010年9月末時点(908兆8,617億円)を10兆2,894億円上回り、過去最大を更新した。地方が抱える長期債務残高は2010年度末で約200兆円程度と見込まれており、国と地方を合わせた借金は、とどまることを知らず、大台の1,000兆円を軽く突破する状況にある。
  昨年9月末に比べ、国債は約12.5兆円増の約753.8兆円で全体の約82%を占め、うち普通国債(建設国債+赤字国債)は、税収不足を補うために増発した影響で約14.3兆円増の約628.2兆円と過去最高となった。また、一時的な資金繰りに充てる政府短期証券は約2.9兆円減の約110.3兆円、財政投融資特別会計国債も約1.9兆円減の約121.4兆円と、いずれも減少したが、借入金は約0.7兆円増の約55.1兆円と増加している。
●  国民1人あたり約722万円の借金
  この「国の借金」919兆1,511億円は、2010年度一般会計予算の歳出総額92兆2,992億円の約10倍、同年度税収見込み額37兆3,960億円の約24.6倍である。年収500万円のサラリーマンが1億2,300万円の借金を抱えている勘定だ。また、わが国の今年1月1日時点での推計人口1億2,737万人(総務省統計、概算値)で割ると、国民1人あたりの借金は、昨年6月末時点の約710万円から約722万円に膨れ上がる。
  なお、わが国の公債残高(普通国債残高)は年々増加の一途をたどっており、2010年度末(当初予算ベース)の公債残高は、2009年度末実績での594兆円から637兆円程度に膨らむと見込まれている。これは、2010年度一般会計税収予算額約37兆円の約17年分に相当し、将来世代に大きな負担を残すことになる。また、この2010年度末公債残高の約637兆円は、国民1人当たり約500万円、4人家族で約1,998万円となる。
●  2011年度の国民負担率は38.8%に微増
  こうしたなか、財務省は、2010年度の実績見込みでは38.7%だった国民負担率が、2011年度予算では0.1ポイントの微増となる38.8%となるとの見通しを発表した。これで2年連続前年を上回る。2011年度見通しの内訳は、国税が12.3%、地方税が9.7%で租税負担率が22.0%、社会保障負担率は16.8%。国民負担率とは、国民所得に対する税金や社会保険料(年金・医療費などの保険料)の負担割合である。
  2010年度実績見込みに比べ、租税負担率は0.1ポイント増(国税は0.2ポイント増、地方税は0.1ポイント減)、社会保障負担率は横ばい。社会保障負担は増え続けており、同負担率はこの統計を開始した1970年以降では2010年度に続き最高を記録。国民負担率を諸外国(2008年実績)と比べた場合、アメリカ(32.5%)よりは高いが、フランス(61.1%)、スウェーデン(59.0%)、ドイツ(52.0%)、イギリス(46.8%)などより低い。
●  「潜在的国民負担率」は49.8%となる見通し
  真の負担率は、財政赤字という形で将来世代へ先送りしている負担額を加える必要がある。財務省によると、2011年度の国民所得(2010年度に比べ5万6千円増の351万1千円)に対する財政赤字の割合は、前年度から0.9ポイント減の11.0%となる見通し。この結果、2011年度の国民負担率に財政赤字を加えた「潜在的国民負担率」は、2010年度からは0.8ポイント減の49.8%となる見通しだ。
  この「潜在的国民負担率」は、2009年度の54.0%、2010年度の50.6%に次いで3番目の高水準となる見通し。
  なお、租税負担率は、戦後は1940年代後半の混乱期を除いて20%前後で推移。しかし76年度以降、次第に上昇し始め、89・90年度の27.7%をピークに、その後はほぼ20%台前半で推移し、2011年度もほぼ同水準となる見込みだが、OECD加盟34カ国中、比較可能な30カ国のなかではもっとも低い。
  近い将来、国税だけで1,000兆円を超えることが確実な国の借金だが、将来世代へ禍根を残さないためにも、財政再建が喫緊の課題となるのはいうまでもない。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2011.02.21
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