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平成21事務年度における相続税の調査の状況について
  平成23年度税制改正対象項目として相続税制度が取り上げられ注目を集めているが、その税制改正大綱の発表と同じく昨年の12月に、国税庁から標記についても公表されている。これは、平成21事務年度(平成21年7月〜平成22年6月)に実施した調査の状況をまとめた内容であり、相続税の申告・納税を巡る実態の一端を見ることができる。
●  調査件数のうち申告漏れ等の非違があったのは84.7%
  この調査は平成19年中または平成20年中に発生した相続の中から、国税局や税務署で収集された情報等をもとに、申告額が過少であると想定されるものや申告義務があるにもかかわらず無申告となっていると想定されるものを対象として実施された。調査件数は13,863件、このうち申告漏れ等の非違があったのは11,748件で全体の84.7%という結果となっている。
  また、財産の偽装や隠蔽、いわゆる財産隠しがあったと判定された場合に対象となる重加算税が賦課されたのは1,970件で非違のあった件数の16.8%、申告漏れ課税価格3,995億円のうち重加算税賦課の対象は698億円であり17.5%を占めている。
  以上の結果、追徴された税額は合計で856億円に上っている。1件当たりで見ると、申告漏れ課税価格が3,400万円で、それに対する追徴税額が729万円となっている。
●  申告漏れ財産のトップは「現金・預貯金等」で、30%を超える
  申告漏れとなった財産について見てみると、「現金・預貯金等」がトップで全体の32.8%を占め、「有価証券」がそれに続いて20.1%、両者を合わせた金融資産で52.9%と全体の半分以上を占めている。
  一方、土地や家屋といった不動産は17.7%にとどまっている。「国税庁統計年報 平成20年度版」によると、相続財産の構成割合は不動産が約55%であるのに比べて金融資産はそれより20ポイントも低い約35%、そのような状況から考えると、金融資産の申告漏れの傾向が極めて大きいと考えて差し支えないだろう。このような傾向は過去5年間にも共通して見られる。
●  無申告事案における1件当たりの申告漏れ課税価格は1億4,000万円を超える
  当調査の中には、無申告事案に係る調査事績もまとめられているが、調査対象となった626件のうち申告漏れ等の非違があったのは528件で84.3%を占め、件数の比率としては調査全体とほぼ同様の傾向となっている。一方、申告漏れとなった課税価格についての1件当たりの実績を比較してみると、金額で1億4,332万円と調査全体の実績の4倍超、それに伴う追徴額も934万円で約1.3倍となっている。
  無申告事案は、申告納税制度のもとで自発的に適正な申告・納税を実践している善良な納税者に対して公平感を著しく損なう事象として税務当局も捉えており、その実態の把握にも重点的に取り組む姿勢が示されている。
●  相続税制度の改正によって、相続税の申告・納税はますます身近な問題に
  今回の税制改正において大綱の内容どおりに法案が可決されれば相続税の納税対象範囲が広がるということもあり、相続税納税に対する関心が高まっているようだ。ご存じのとおり、相続税の納税は申告・納付期限までの現金による一括納付が原則であり、高額となりかねない納税資金の準備は重要な相続対策の一つとなる。これからの人生設計を考える際、相続の問題はますます身近なものになると思われる。
参考資料:国税庁「平成21事務年度における相続税の調査の状況について」
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2010/sozoku_chosa/01.pdf
国税庁「第134回 国税庁統計年報 平成20年度版」
http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/h20/h20.pdf
2011.02.28
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