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「胃粘膜下腫瘍」告知における留意点
●  胃粘膜下腫瘍とは
  胃の壁は内側(表面側)から粘膜層・粘膜下層・筋層・漿膜層で構造されており、表面の粘膜層から発生したポリープやがんなどは「上皮性腫瘍」といわれます。
  これに対し粘膜層より下の非上皮性の腫瘍を総称して「胃粘膜下腫瘍」といいます。内視鏡では、正常粘膜が下から押し上げられ盛り上がりを示し、表面の多くは平滑ですが、くぼみや潰瘍があるケースもあります。内視鏡で組織を採取しても、病変の大部分は粘膜下にあるので、病理学的診断は難しいことが多いです。
●  胃粘膜下腫瘍の分類
  筋肉由来の胃平滑筋腫(良性)が4割〜5割を占めます。
       脂肪腫(脂肪組織からできる)
    線維腫(線維組織からできる)
  その他組織学的に、迷入膵(膵臓の組織が胃の筋層に入り込んだものが大きくなる)・神経性腫瘍(神経組織由来の腫瘍)・肉芽腫(傷跡など)・血管腫(血管の細胞からできる腫瘍)等があり、全体的には良性のものが多いです。
  悪性のもの
       胃平滑筋肉腫
    リンパ組織由来の胃悪性リンパ腫
●  症状
  小さいものは特に症状がないため健診などで偶然発見されます。大きいものは通過障害やみぞおちの痛み、腹痛を起こすことがあります。中心部に壊死がある場合には、出血により貧血症状や吐血・黒色便といった症状が出ることがあります。
●  経過と治療
  2cmまでの小さな腫瘍は、大部分が良性で定期的に経過観察されます。2cm〜5cmでは、内視鏡下または腹腔鏡で切除することもあります。5cm以上のものや、それ以下でも急激に増大するものは、悪性の可能性もあり腹腔鏡または開腹手術をします。
●  治療
       内視鏡的腫瘍摘出術(病変が筋層よりも浅い場合)
    腹腔鏡下胃部分切除術
    開腹手術(大きさや位置により胃を全摘出することもあります)
     術後の病理組織検査で特定遺伝子が陽性の場合、胃粘膜下腫瘍と診断され、悪性度により経過観察されたり、転移・再発をきたした場合には分子標的治療剤を内服することもあります。
●  ご契約をいただく際には
  大部分は良性ですが、悪性ものとの鑑別が重要になってきます。お客さまから告知をいただく際には、下記をご記入いただくとよいでしょう。
       発見された理由(健診、症状があったのか)
    発見された時期
    大きさ
  発見されてから間もないもの、大きさの不明なものは厳しくなると考えた方がよいでしょう。
  胃粘膜化腫瘍を手術で摘出されている場合、悪性の可能性を否定するためには病理組織診断の記載のある診断書を提出されることをおすすめいたします。年齢・術式・入院日数等の詳細が判明したうえで良性の可能性が高いと判断される場合には、死亡保険については保険金削減等の特別条件付きや、医療保険については部位不担保等で加入できる可能性があります。
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2011.03.07
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