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主婦の年金未納問題、救済策見直しへ
●  夫の脱サラ時に届け出忘れてた主婦100万人の救済策
  年金未納の主婦に対する救済策が大きな波紋を呼んでいる。今回の対象となるのは、夫の脱サラ時に届け出をしなかったことにより、年金未納状態となってしまった主婦。
  夫がサラリーマンで妻が専業主婦という家庭で、夫が自営業者になると妻の公的年金での立場も変わる。夫がサラリーマンの場合、妻は第3号被保険者という特別な立場になり、保険料を負担せずに国民年金加入者と同じ年金がもらえる。しかし夫が自営業者になれば厚生年金を脱退し国民年金に加入することになり、その妻も第1号被保険者として年金保険料を納めなければならない(図1)。
  上記の場合、夫も妻も第1号への変更手続きは自分でしなければならない。夫は会社からのアドバイスなどもあって他の手続きと一緒に済ませていたが、妻の方の手続きはしなかったために未加入状態が長く続いてしまったというケースが非常に多かったようだ。新聞報道では該当者は100万人に達するそうだ。
  未加入期間が長い人では加入期間が足りないために無年金になる恐れがあるし、周知を徹底しなかった旧社会保険庁にも責任の一端はある。そこで厚生労働省は、救済策として該当する主婦を「運用3号被保険者」とみなして、過去2年分の保険料を支払うだけで過去分すべてについて保険料を払ったとみなすという特例を今年1月から始めた。これが波紋を呼んだ「年金未納の主婦の救済策」である。
●  「保険料を払った人と払わなかった人の年金額が同じ」に強い反発
  この救済策が適用されると、きちんと手続きをして保険料をずっと払っている主婦Aさんと、手続きをしなかった主婦Bさん(夫脱サラ後の保険料は過去2年分のみ負担)の年金額が同じということになる(図2:加入期間が同じ場合)。本人の不注意については全くペナルティーが課されないのは、著しく不公平というわけだ。
●  批判を受けて救済策は変更へ
  この救済策が明らかになってからは、各所から不公平批判が噴出し国会でも問題となった。また、テレビや新聞でも頻繁に取り上げられたことから、一般の人の年金制度への不信感も強める結果となった。
  3月8日には、当初の救済策は廃止され、法改正で対応する方針が発表された。
  新救済策の方針は、
(1)未納期間の保険料をすべてさかのぼって追納できるようにする(原則は過去2年間のみ)
(2)追納しない期間分の年金はもらえないが、年金受給資格の計算には加える(カラ期間とする)
  というものである。
  3年の時限立法として今国会での成立をめざすとしているが、この混乱の中、それが可能なのかどうか。救済策が決まらないことが新たな不安の元となることがないよう、早期の解決を望む。
(CFP® 山田 静江)
2011.03.14
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