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国税庁、災害に関する主な税務上の取扱いを公表
  国税庁はこのほど、3月11日に発生した東日本巨大地震による被害が広範囲に及んでいること等を踏まえ、災害に関する主な税務上の取扱いを整理し、同庁ホームページ上に公表した。
  これは、災害に関して法人や事業を営む個人が支出する費用などの現行の主な取扱いについて、法人税及び所得税共通、法人税関係、所得税関係、相続・贈与税関係、印紙税関係、自動車重量税関係に分けて全15項目の取扱いを示したものだ。
●  法人税及び所得税共通は
  法人税及び所得税共通では、まず、法人及び事業を営む個人の有する商品、店舗、事務所等の資産が災害により被害を受けた場合に、
   (1) 商品や原材料等の棚卸資産、店舗や事務所等の固定資産などの資産が災害により滅失・損壊した場合の損失の額
   (2) 損壊した資産の取壊し・除去のための費用の額
   (3) 土砂その他の障害物の除去のための費用の額
が生じたときには、その損失・費用の額は損金の額(必要経費)に算入される。
  次に、被災資産について支出する費用に係る資本的支出と修繕費の区分は、
   (1) 被災資産の原状を回復するための費用は修繕費
   (2) 被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水・土砂崩れ防止等のために支出する費用について、修繕費とする経理処理を認める
   (3) 上記以外の費用のうち、区分が明らかでないものがある場合は、その金額の30%相当額を修繕費、残額を資本的支出とする経理を認める
となる。
  災害により被害を受けた従業員等やその親族等に対して一定の基準に従って支給する災害見舞金は、福利厚生費として損金(必要経費)に算入。また、所属する同業団体等の構成員の有する事業用資産が災害により損失が生じた場合に、その損失補てんを目的とする構成員相互の扶助等に係る規約等に基づき合理的な基準に従って、同業団体等から賦課され、拠出する分担金等は、その支出する事業年度の損金(必要経費)に算入される。
●  法人税関係では
  法人税関係では、まず、法人が、被災前の取引関係の維持・回復を目的として、取引先の復旧過程においてその取引先に対して行った災害見舞金の支出、事業用資産の供与等のために要した費用は、交際費等に該当しないものとして損金の額に算入される。
  次に、災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として売掛金、貸付金等の債権を免除する場合には、その免除することによる損失は寄附金または交際費等以外の費用として損金の額に算入される。既契約のリース料、貸付利息、割賦代金の減免を行う場合及び災害発生後の取引につき従前の取引条件を変更する場合も、同様に取り扱われる。
  災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として低利または無利息による融資を行った場合における通常収受すべき利息と実際に収受している利息との差額は、寄附金に該当しないものとされる。
  不特定または多数の被災者を救援するために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用は、寄附金または交際費等に該当しないもの(広告宣伝費に準ずるもの)として損金の額に算入される。
  法人の各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額のうち、棚卸資産、固定資産等について災害により生じた損失に係るもの(災害損失欠損金額)がある場合には、その事業年度が青色申告書を提出しなかった事業年度であっても、その災害損失欠損金額に相当する金額は、その各事業年度において損金の額に算入される。
  そのほか、所得税関係では、個人が支払いを受ける災害見舞金や、低利または無利息により生活資金の貸付けを受けた場合の経済的利益、被災事業用資産の損失の繰越しについて、それぞれ税務上の取扱いが示されている。

  この件の詳細は↓
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h23/jishin/atsukai/index.htm
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
※タックス・コム発行図書 「中小企業のための生命保険講座(経営者編)」など
 → http://www.taxcom.co.jp/h22_seimeihokenkouza/index.html
2011.04.04
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