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「だ液腺腫瘍(混合腫瘍)」告知における留意点
  「だ液腺」は、だ液を分泌する腺で、
  ・大だ液腺(耳下腺・顎下腺・舌下腺)と
  ・小だ液腺(口腔や咽頭内に広く分布し、直接口腔に分泌する)があります。
  耳下腺(じかせん)や顎下腺(がっかせん)、舌下腺(ぜっかせん)などを総称して「だ液腺」といいます。
  だ液腺にできる腫瘍の頻度は、耳下腺が約8割、以下、小だ液腺、顎下腺の順で、舌下腺は約1%しかありません。発生頻度とは逆に悪性腫瘍の割合は、舌下腺が最も多く(約7割)、小だ液腺、顎下腺、 耳下腺(2〜3割)の順となっています。したがって一番多いのは、耳下腺の上皮性の良性腫瘍の多形腺腫(混合腫瘍)ということになります。
  組織像が複雑・多彩であり、診断が難しい疾患の一つで、2005年のWHO分類では37もの腫瘍型(悪性24、良性13)に分類されています。
良性では
  ・良性多形腺腫(上皮と結合組織が混在しているため混合腫瘍という)
  ・ワルチン腫瘍(上皮性の腺リンパ腫)、基底細胞腺腫
  ・オンコサイトーマ などが多いです。
悪性では、
  ・腺様嚢胞がん
  ・粘表皮がん
  ・多形性腺腫内がん が多いです。
●  自覚症状
  ほとんどないか、大きい場合には無痛性・可動性の腫瘤として自覚されます。悪性の場合は増大の速度が速く、痛みや顔面神経麻痺が生じたり、放置すると頸部のリンパ節転移が現れたりもします。
●  鑑別が必要な疾患(似ているが違う疾患)
   ・がま腫         ・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
   ・唾石症(だせきしょう)         ・急性耳下腺炎(細菌・ウイルス)
   ・進行したシューグレン症候群         ・だ液腺嚢胞
   ・悪性リンパ腫        
●  治療
  良性の場合は、ゆっくりと増殖し無症状なので、経過観察をするか、手術をして切除(顔面神経・舌下神経・舌神経を残すため神経を傷つけないよう部分的に切除)をします。悪性の場合は、耳下腺の場合は耳下腺全摘出に加え、抗がん剤や放射線治療が行われる場合があります。他の悪性疾患と同じく、リンパ節転移や肺転移、骨転移などをきたすこともあります。この際顔面神経の吻合や自家移植による神経再建術を行うこともあります。
●  合併症・予後
  耳下腺や顎下腺内には重要な神経が走行しているので、うまく摘出しないと顔面神経麻痺が残る場合があります。逆に、摘出が不十分だと腫瘍が残って再発することがあります。また、混合腫瘍は長期経過中に悪性化して悪性混合腫瘍(多形腺腫内がん)となることもあります。
●  ご契約をいただく際には
  悪性度と再発の有無が重要になります。治療をされていない場合は加入が難しいでしょう。ただし、検査内容等により良性と判断されれば、生命保険については保険金削減などの条件付き、医療保険については部位不担保等の条件付きでの加入も可能かもしれません。切除手術を実施した場合で組織型や悪性度不明の場合は、悪性を否定するためには診断書を告知書に添えることをおすすめいたします。
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2011.04.18
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