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「甲状腺機能亢進(こうしん)症」告知における留意点
  甲状腺は、皆さんご存じのとおり、首の前側にあり蝶が羽を広げたような形をしています。甲状腺は内分泌器官で、人体のエネルギー代謝や循環内分泌機能を調節する役割があります。実際には下垂体から産生される甲状腺刺激ホルモン(TSH)が、甲状腺表面の受容体(TSHレセプター)に結合することでホルモン分泌が調節されています。
  「甲状腺機能亢進(こうしん)症」の大部分は、びまん性甲状腺腫を示すバセドウ病(またはGraves病)です。バセドウ病は、TSHレセプターに対する自己抗体が血液中に生じる結果、甲状腺ホルモンが過剰に産生されるという自己免疫疾患です。20〜30代の女性に多く見られます。
●  自覚症状
  甲状腺機能亢進症では、全身の新陳代謝を活発にさせるさまざまな症状が起こります。
   甲状腺腫大・眼球突出・頻脈(代表的な三徴候)
   動悸・発汗・体重減少・微熱・易疲労感(代謝亢進のため)
   手指の振戦
   月経異常・集中力の低下・不眠(ホルモンバランスが崩れるため)
   高血圧・心房細動(心機能亢進のため)
   甲状腺クリーゼ(突然重篤な甲状腺機能亢進状態となり生命に関わることもある)
   低カリウム性周期性四肢麻痺・筋力低下・脱力・コレステロール低下
●  治療
   薬物療法
     甲状腺ホルモンの合成を抑えるメルカゾールやプロパジールなどの抗甲状腺剤を投与します。甲状腺刺激抗体が消えるまで長期にこれらの薬剤を服用するため、皮膚の炎症や無顆粒球症の副作用が生じることもあります。
頻脈や振戦に対しては、β-ブロッカーが投与されることもあります。
   アイソトープ(放射性ヨード)治療
     ヨードの放射性同位元素を服用し、甲状腺の細胞数を減らす治療法です。治療の結果、甲状腺機能低下症になることもあります。また被爆の影響もあります。
   手術
     甲状腺の一部を残して甲状腺組織を切除する手術をします。
再発は少ないですが、甲状腺機能低下症になることもあります。
●  予後
  甲状腺機能亢進症は、適切な治療を受ければ予後良好な疾患です。治療により甲状腺機能低下症となった場合には、甲状腺ホルモン剤(チラージン)による補充療法を続ける必要があります。
●  ご契約をいただく際には
  甲状腺機能亢進症と診断されても、治療をしていない場合には、加入が難しい保険会社が多いと思います。
  メルカゾールなどで治療中の場合には、心疾患や不整脈の合併症・頻脈の程度により死亡保険は保険料割増し等の条件付き、医療保険については延期か、あるいは部位不担保等の条件付きでの加入となる場合が多いでしょう。甲状腺機能亢進症による眼症状がある場合は、視力についての特定障害に関する不担保や部位不担保等の条件が追加されるでしょう。
  既往症の場合には、手術の有無・合併症・後遺症・再発の有無および治癒後の経過年数によりますが、死亡保険は保険金削減等の条件付き〜標準体、医療保険は延期〜部位不担保等の条件付きでの加入が可能でしょう。よって、これらのことを詳細に告知されることをおすすめします。
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2011.05.09
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