>  今週のトピックス >  No.2233
震災後の投資家心理状況
  東日本震災後に投資家の心理状態はどのように変化し、どのような行動を取ったのか。株式、為替、債券市況について阪神大震災と比較しつつ検証してみた。
●  株式市場は1週間がポイント
  株式市場は、震災前3月10日の10,434円から3月17日には8,965円まで急落している。これは、日本経済のダメージが大きく、復興までには相当の時間と費用がかかるだろうと予想されたことによる。また、これからどのようなことが起きるのか先行きが不透明な場合には、株式を売却して現金化し、次の相場に備えるという心理状態も働いたと思われる。その後は、概ね落ち着きを取り戻し、5月2日には10,000円を回復している。
  阪神大震災が起きた1995年1月17日震災前の株価は、同13日19,331円から翌週の23日には17,785円まで急落している。その後は18,700円台まで回復したが、日本のバブル崩壊とともに値を崩している。どちらのケースでも震災後1週間前後がセリングクライマックスとなる。不安が先立ち、狼狽売りする投資家が多いようだった。
●  為替は円高に
  為替は、3月11日は88円20銭前後で推移していたが、17日は77円16銭まで円高が進んだ。日本の保険会社が地震保険や生命保険の保険金を準備するために、海外の資金を回収するだろうという思惑から予想外の円高にぶれたようだ。また、阪神大震災時の為替動向は、1月17日は99円10銭であったが、3カ月後の4月17日は79円75銭まで円高が進んでいる。これは被災した企業の海外資産売却、保険会社の保険金の準備などが要因とも思われる。阪神大震災のときの経験から今回も急激な円高を招いたようだ。
  震災後の債券相場は一進一退となっている。長期金利は11日に1.2%強で推移していたが、その後は1.3%台まで上昇した。これは、復興するには国債発行が必須と思われ、震災復興国債の大量発行の予想から債券が売られ金利上昇を招いたが、その後、資金の流動性の確保や増税の思惑から債券が買われ、債券相場は上昇し1.1%台となった。
●  日ごろからスタンスの確立を
  このように、震災などの大きな変動が起きた場合の投資家は、同じような行動を繰り返すことが多いようだ。
  震災後にまとめ買いをした人は、日ごろ衝動買いをする人が多かったという。日ごろの自分の行動は投資行動につながるため、狼狽売りや衝動買いを抑えキチンとした投資スタンスを確立したいものである。
   当資料は客観的情報提供を目的としており、投資等の勧誘または推奨を目的としたものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身で判断して頂けますようお願いします。また、掲載しております情報内容に関しては万全を期しておりますが、その内容の正確性および安全性を保証するものではありません。当該情報に基づいて被ったいかなる損害につきましても情報提供者は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
(株式会社FPウィム代表取締役、ファイナンシャル・プランナー 伊田 賢一)
2011.05.16
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