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コモディティー相場、天井かバブル継続か
●  銀価格急落をきっかけに調整
  堅調に推移してきた国際商品市況に変調の兆しが見え始めた。5月上旬にそれまで急騰劇を演じてきた銀の先物価格が急落。これをきっかけに原油や穀物などコモディティーと呼ばれる商品市場全般が調整している。「コモディティー・バブル」とも呼ばれてきた商品相場は天井を迎えたのか、それともバブルが継続するのか。商品市況の動向は株式や債券などの市場にも影響が大きいだけに注目度が高まっている。
  きっかけとなったニューヨーク銀先物価格は、4月下旬の時点で31年ぶりの高値圏にあった。相場の過熱を冷やすため、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが取引の証拠金を数回にわたって引き上げた。レバレッジをかけて銀に投機していた投機家を中心に売りを迫られたことで、銀の価格は高値から3割以上も下落。高値圏にあったほかのコモディティーも調整局面入りした。
●  商品ETFが価格上昇を演出
  そもそもなぜ商品市場がバブルといわれるまで過熱していたのだろうか。背景にあるのは新興国の台頭とそれに伴う資源や穀物の需要増加予測だが、もう一つ見逃せないのが上場投資信託(ETF)の存在だ。ETFは株式市場に上場した投資信託のことで、特定の指数に連動する。例えば2004年に米国で登場した金のETFは、実物資産である金の価格と連動する。投資家は金ETFのおかげで金の現物や先物を保有する必要がなくなり、株式と同じ感覚で金を取引できるようになった。
  こうした「コモディティーETF」は銀、プラチナ、原油、とうもろこしなどさまざまなコモディティーに広がっている。それほど大きくないコモディティーの市場に、実需だけでなく投資のマネーが大量に流れ込んだことで相場が過熱しているのだ。世界の商品ETFの残高は今年3月末時点で約14兆円と、3年前の4倍の規模に拡大したという。
  一部の投資家はこうした「コモディティー・バブル」への警戒感を強めている。その筆頭が著名投資家のジョージ・ソロス氏だ。ソロス氏のファンドは日本円で500億円規模の金ETFを買い込んでいたが、3月までにほとんど売却してしまった。金先物価格は5月初めに過去最高値を更新したものの、足元はやはり調整している。
●  バブル崩壊はまだ先か
  それでは今後はどうなるのか。筆者の予想ではバブルが完全に弾けるのはまだ先とみている。商品市場に流れ込んでいる投資マネーの膨張は日米欧など先進国の金融緩和が要因となっている。欧州は4月に利上げに踏み切り、金融引き締め局面に入ったが、国内経済が低調な米日は当面金融緩和を続けざるを得ない。こうした環境が続く限り、商品相場は上昇と調整を繰り返すのではないだろうか。
(内容は5月24日執筆時点のものです)
2011.05.30
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