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「三叉神経痛(さんさしんけいつう)」告知における留意点
  「顔面神経痛」とよくいわれていますが、正確には「三叉神経痛」です。脳幹から直接出ている末梢神経は、脳神経と呼ばれ左右12対ありますが、三叉神経はその5番目(第五脳神経)で、頭部や顔面の皮膚感覚等に関与しています。脳幹を出た後眼神経(V1)、上顎神経(V2)、下顎神経(V3)の三神経に分かれているため「三叉神経」と呼ばれます。この神経が何らかの原因で圧迫されたり、炎症を起こしたりすることで痛みが生じます。
● 症状
  三叉神経痛の程度は非常に強く、突発的に起きます。数秒から数十秒程度でいったん軽快しますが、繰り返したり数時間持続することもあります。洗顔、そしゃく、歯磨き、冷引水、風にあたることなどが誘発因子となります。
  2:3ほどの割合で男性より女性にやや多く、50代以降に発症し、多くが片側に起こります。よって、若年で両側に起きたものについては、多発性硬化症や他の疾患の可能性も疑う必要があります。神経走行上は頭部や顔面のどこにも起きる可能性はありますが、ほおやあごといった、顔の下半分の疼痛が多いようです。
● 原因
  三叉神経周辺の血管が神経を圧迫することが原因と考えられています。動脈硬化が原因で蛇行したり、膨張した血管が神経を圧迫している特発性のものと、脳動静脈奇形や脳腫瘍が圧迫の原因の症候性のものがあります。まれに、帯状疱疹後など、ウイルスによる直接的な神経の炎症が原因の場合もあります。CTやMRIで圧迫血管の存在や、その他の頭蓋内病変の有無も調べます。
● 治療
    内服治療
  もともとはてんかんの薬であるカルバマゼピンという内服薬が、神経の伝達を抑え痛みを抑えるのでよく効きます。しかし、一時的に痛みを軽減するだけで根本的な治療ではありません。
    定位放射線治療
  脳の外の多くの方向から放射線を照射して脳の深部の一点に強い放射線をあてる治療で、ガンマナイフやサイバーナイフなどがありますが、痛み軽減の理由はよく分っておらず、対症療法なので、手術療法より効果は低いです。
    三叉神経ブロック
  三叉神経に直接局所麻酔薬(アルコール)や神経破壊薬(グリセロール)を注射して痛みをとります。神経破壊薬のかわりに高周波の電流で神経を焼く治療もあり、数年程度痛みは軽減しますが、顔面にしびれ感は残ったり、数年後に痛みが再発することもあるので、根本的な治療法ではありません。
    手術療法
  神経を圧迫している血管が見つかった場合、全身麻酔下で耳の後ろから頭蓋骨に穴を開けて顕微鏡下で圧迫している血管を移動し、神経と血管を分離します(神経血管減圧術)。成功率も高く、根本的な治療なので、痛みはすぐ軽快します。しかし、生命の中枢である脳幹部は深部にあるので、手術時の危険や術後の合併症(顔のしびれ感)や後遺症(聴力障害・複視)も数パーセント生じるといわれています。
● ご契約をいただく際には
  原因を告知していただくことが重要です。現在治療中の場合は、軽度の場合でも入院保険についてはいったん延期となるでしょう。死亡保険については、軽度であれば軽い条件付きでの引受、重度あるいは原因不明の場合は、いったん延期となる可能性が高くなります。
  既往症については、一定期間経過していて再発がないようであれば、標準体での引受も可能でしょう。
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2011.06.06
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