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「WPW症候群」告知における留意点
  「WPW症候群」とは、頻脈性の不整脈を生じる心臓病です。集団検診の心電図検査で約0.15%(1,000人に1〜2名)に見られ、それほど少ない病態ではありません。
  原因としては、生まれつき心房と心室の間にKent束と呼ばれるバイパスのような副伝導路が存在するために、電気刺激の空回り(リエントリー回路)状態が生じて頻脈発作が起こります。多くは自然に収まりますが、長時間続く場合や、心房細動を生じたものは、意識を失ったり、心室細動に移行し突然死に至る危険性もあります。
  1930年に3人の研究者であるWolff(ウォルフ)、 Parkinson(パーキンソン)、White(ホワイト)によって多くの詳しい報告がなされたので、3人の頭文字をとって「WPW症候群」と名付けられました。
● 症状
  WPW患者の半数以上で、上室性頻拍または心房細動が起こるといわれています。突然始まり突然止まる規則的な動悸や、まったく不規則に脈打つ動悸、重篤な場合には意識消失などの症状があります。しかし、副伝導路があっても症状が出る人は一部で、多くは健康診断の心電図検査で偶然発見されます。
● 予後
  1980年代からの研究により、WPWに合併した発作性心房細動(PAF)は通常の心房細動とは異なり高度の頻脈や、心室細動に移行するケースもあるので危険な不整脈と考えられるようになりました。
● 治療
  頻脈発作等の自覚症状がなければ経過観察を行いますが、発作の引き金ともなる過度な運動、過労やストレス、睡眠不足などに注意します。発作時には、迷走神経刺激や頚動脈洞マッサージ、眼球加圧、無効例にはATPやカルシウム拮抗薬を静注しますが、発作性心房細動を合併した場合には逆に禁忌となる薬もあり、特にジギタリスは心室細動を誘発する可能性もあるので注意が必要です。
  危険度の高いタイプの場合は、抗不整脈薬を服用し続ける必要がありますが、根治的な治療法としては、先端に電極がついたカテーテルを用い、高周波アブレーションにより、副伝導路を遮断する手術があります。この治療法は90%以上の有効率といわれています。
● ご契約をいただく際には
  頻拍発作の有無やアブレーションの有無が重要です。
  発作性頻拍のないもの、または検診で偶然発見され経過観察程度のものは、死亡保険も医療保険も加入が可能と思われます。
  発作性頻拍の既往があるか、不明の場合は、死亡保険については保険料割増等の条件付き〜延期、医療保険については延期となる可能性が高いです。
  カテーテルアブレーションを実施したものは、有効性がかなり高いので、手術後2年間くらいの経過観察を経て、発作の再発がないものは加入できる可能性が高いと思われます。
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2011.06.20
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