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平成22年度個別労働紛争の相談件数、高水準を継続
●  個別労働紛争の相談件数は、約24万7,000件
  厚生労働省は、平成22年度の個別労働紛争解決制度施行状況を発表した。22年度に都道府県労働局などの総合労働相談コーナーに寄せられた民事上の個別労働紛争の相談件数は24万6,907件(前年度比0.2%減)となった。制度発足以降、件数は右肩上がりで増加してきたが、今年度はほぼ横ばいであり、過去最高を更新した前年度と同水準で高止まりしている状況である。
  「個別労働紛争解決制度」は、労働関係について個々の労働者と事業主との間の紛争を円満に解決することを目的としているが、平成13年10月の法律施行から今年で10年の節目を迎え、職場での紛争解決に大きな役割を果たしており、今後は時代の変化に対応して、制度内容の見直しを考えてみてもいいかもしれない。
●  「いじめ・嫌がらせ」が増加
  調査結果によると、総合労働相談、民事上の個別労働紛争に係る相談、助言・指導申出受付件数は、過去最高を記録した平成21年度と同水準で高止まりしている一方、あっせん申請受理件数は減少した。あっせん申請受理件数は、6,390件(前年度比 18.3%減)であったが、平成22年度のあっせん申請内容の内訳を見ると、「解雇」に関するものが 37.5%と最も多く、「いじめ・嫌がらせ」が14.4%、「労働条件の引下げ」が8.3%と続いている。件数は前年度と比べて減少したが、割合としては、「解雇」に関するものが減少し、「いじめ・嫌がらせ」などが増加しており、紛争内容は多様化している。これは、都道府県労働局長による助言・指導に関しても同じような傾向がみられており、企業側がマネジメントしていくうえで参考になるデータといえるだろう。
●  助言・指導申出人の就労状況は、非正規雇用の割合が増加
  あっせんや助言・指導の紛争解決制度を利用するのは、労働者からの申出がほとんどであり、事業所の規模としては、「10人〜49人」が3割、「10人未満」も比較的多く、労働組合がない事業所に勤務されている労働者が多くなる傾向がある。
  平成22年度の助言・指導申出人の労働者の就労状況は、「正社員」が48.3%と最も多く、「パート・アルバイト」が23.7%、「期間契約社員」が16.9%、「派遣労働者」が4.6 %である。前年度と比べて正社員の割合が減少し、非正規雇用の割合が増加したのが大きな特徴で、今後も非正規雇用者の割合が、増えてくるものと思われる。
  東日本大震災後に、経営状況の悪化から退職勧奨や整理解雇により離職する労働者の数が増加している。これは東北3県の被災地に限らず、首都圏の企業でも同様の傾向があり、中には震災に便乗した解雇で、紛争に発展していることも少なくない。そのような場合には、比較的ハードルが低く、スピーディーに問題を解決できる可能性のある個別労働紛争解決制度を労使ともに検討するというのも1つの方法である。

参考  厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001clbk.html
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2011.06.20
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