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2011年度税制改正法案は修正・分離で6月中に成立
●  税制抜本改革関連の見直しは継続審議
  民主党・自民党・公明党の3党は、衆議院に提出されている2011年度税制改正法案の処理について協議を重ねていたが、6月8日に合意に達し、政府は10日、2011年度税制改正法案のうち、6月末で期限切れとなる租税特別措置などを切り離して修正したものを新たな法案(「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」)として閣議決定し、国会に提出した。これによって、6月中に成立することが確実になった。
  修正の内容は、
   (1)  税制抜本改革の一環をなす改正である、個人所得課税、法人課税、資産課税、消費課税(温暖化対策税)の見直しについては、復興のための2011年度補正予算の検討と併せ、各党間で引き続き検討する。
   (2) 国税通則法の改正についても引き続き協議を行い、(1)の改正項目についての協議の際に、更正の請求期間の延長を始めとする納税環境の整備の成案を得るものとする。
   (3) 今国会中に成案を得られない場合には継続審議とする。
   (4) 2011年度税制改正法案のうち、(1)、(2)以外の改正項目については、別に政府提案の法案を提出し、6月中に成立させる。
   (5) (4)の法案の内容は、「雇用促進税制等政策税制の拡充」、「寄附金税制の拡充」、「納税者利便の向上・課税の適正化(年金所得者の申告不要制度の創設、航空機燃料税の引下げ、租税罰則の見直し等)」。
  また、「その他の改正(証券軽減税率の延長、日本版ISA導入の延長)」、「期限切れ租税特別措置の延長」も同様に6月中に成立させる。なお、審議中の税制改正法案において法人税率の引下げに伴い廃止・見直しを行うとしている租税特別措置は、2012年3月31日まで現行税制を延長する。現在審議中の税制改正法案は、「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」に名を変える。
●  地方税改正法案も修正され国会提出
  税制改正法案が、与野党合意により修正法案と新たな法案に分離されることに伴い、地方税も、現在国会で審議中の「地方税法等の一部を改正する法律案」が修正され「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための地方税法等の一部を改正する法律案」として存置され、新たに「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための地方税法等の一部を改正する法律案」を提出、今月中に成立する見込みとなった。
  修正された「地方税法等の一部を改正する法律案」では、所得税や法人税と連動する項目を中心に協議が継続される。税制抜本改革の一環をなす改正である、法人課税での法人実効税率の5%引下げ、減価償却の見直し、欠損金の繰越控除の見直しなど課税ベースの拡大、中小法人に対する軽減税率の引下げ(18%→15%)、給与所得控除の上限設定等の個人所得課税などが対象となり、継続審議とされる。
  一方、新たな整備法案である「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための地方税法等の一部を改正する法律案」では、政策税制の拡充等として、
  (1)雇用促進税制等政策税制の拡充、(2)個人住民税寄附金税額控除の適用化減額の引下げ(5000円→2000円)など寄附金税制の拡充、(3)航空機燃料税譲与税の譲与割合の引上げ、(4)租税罰則の見直しなどが盛り込まれている。
  また、税負担軽減措置関係では、心身障害者を多数雇用する事業所に係る不動産取得税の軽減、協定銀行が破綻金融機関等の事業の譲受けにより取得する不動産に係る非課税等、都市再生特別措置法に規定する認定事業者が取得する不動産に係る特例、Jリート・SPCに係る課税標準の特例の縮減及び期間延長等が盛り込まれている。この新たな整備法案は今月中に成立する見込みとなっている。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)

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2011.06.20
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