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QE2後の世界経済
●  QE=量的緩和
  世界の株式市場が調整局面に入っている。ギリシャの財政危機や新興国の金融引き締めに伴う景気減速懸念が主な要因だが、なんといっても米国の景気が二番底に陥るリスクが高まっているからだ。米連邦準備理事会(FRB)は強力な金融緩和政策、いわゆる「QE2」を6月末で打ち切るとしており、市場は次の一手に注目している。
  そもそもQE2とは何のことだろうか。「QE」とは「Quantitative Easing(量的緩和)」のことで、金融政策の誘導目標を「金利」ではなく、「お金の量」に置く政策だ。米国は日本同様、政策金利を事実上ゼロまで下げており、一段と引き下げる余地はほとんどない。それでも資金を市場に供給することで何とか経済を刺激しようと生み出されたのが量的緩和政策だ。
  量的緩和の先駆者は実は日本銀行だ。日銀は2001〜2006年、主に銀行から大量の国債などを購入し、その代わりにお金を市場に供給した。資金供給量の目安となる数値目標(日銀当座預金残高)も設けた。こうして資金の「量」を緩和し、お金が銀行を通じて企業や市場に向かうことを期待した政策が量的緩和だ。
●  リーマン・ショック後にQE1
  2008年のリーマン・ショック以降、金融危機に伴う景気後退に直面したFRBは2009年3月から10月までQE1を実施。米国債だけでなく、住宅ローン資産担保証券、住宅金融公社債、コマーシャルペーパー(CP)などを大量に購入した。これによって、大崩れした金融相場はある程度正常化したが、景気がなかなか回復しない。そこで2010年11月から国債に絞って大量購入が続けられた。これがQE2である。
  FRBが大量に国債を買えば、資金を市場に大量供給するだけでなく、国債の価格が上昇(金利は低下)する。金利が低下すれば、企業や家計は銀行からお金が借りやすくなり、借りた資金を投資や消費に回すことができる。実際に米国では株価が急上昇し、資産効果もあって消費も拡大した。
●  副作用も強く
  一定の効果もあったQE2だが、強烈なカンフル剤だっただけに副作用も強かった。FRBが市場に大量供給したのは、もちろん米国の通貨ドルだ。基軸通貨のドルが市場にばらまかれたため、債券や株式市場だけでなく商品市場にも大量の資金が流入し原油や穀物など、いわゆるコモディティーの価格が上昇してしまった。
  そのため、経済が好調な新興国では、物価の上昇、つまりインフレが問題となった。さらにドルが大量供給されたため、ドルの価値が下がり、他の国の通貨が上昇した。日本の場合は1ドル=80円を割り込む円高となり、輸出企業の収益を圧迫した。こうして他国の経済に悪影響を与えたため、QE2は「米国の身勝手」と批判された。
  しかし、世界経済をけん引する米国の景気や株式市場が低迷すれば、世界各国の景気や株式市場が悪影響を受けるのも事実だ。現にQE2終了の6月末を待たず、米国だけでなく日本や欧州、新興国の株価は軒並み下落しており、市場ではQE3を期待する声も出ている。
(内容は6月21日執筆時点のものです)
2011.06.27
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