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6割弱の事業所「メンタルヘルスに問題を抱えている正社員がいる」
●  メンタルヘルスケアに対する意識の向上及び課題解決のために
  独立行政法人労働政策研究・研修機構は、6月23日に「職場におけるメンタルヘルスケア対策に関する調査」の結果を記者発表した。これによると、メンタルヘルスに問題を抱えている正社員がいると回答した事業所は56.7%にのぼり、うち31.7%の事業所は3年前に比べてその人数が増えたと回答していることがあきらかになった。
  この調査は、メンタルヘルスケアにかかわる検討に資するため、職場におけるメンタルヘルスの実態や企業の取り組み、企業のメンタルヘルスケアに対する意識などを探り、メンタルヘルスケアを進めるうえでの課題を明らかにすることを目的としており、今後の企業経営のヒントとして押さえておきたいデータである。
●  休職・退職者がいてもメンタルヘルス対策に取り組めていない事業所が3分の1
  過去1年間にメンタルヘルスで1カ月以上の休職または退職した労働者がいた事業所について、メンタルヘルスの取り組み状況をみると、「取り組んでいる」事業所が6割強(64.0%)と過半数を占める一方、休職・退職者がいるにもかかわらず「取り組んでいない」事業所が1/3もあることは、少し驚いてしまう割合である。
  一方で今後のメンタルヘルスケアの位置づけについては、強化するべきだと考えている事業所が7割強もある。メンタルヘルスケアの取り組みの有無別にみると、取り組んでいない事業所でも、積極派(「強化する必要がある」9.1%、「どちらかと言えば強化する必要がある」43.3%)が過半数を超えるなど、今後の取り組みの広がりが予測できる結果となっているため、実際の行動にどのように移すのかが問題になるといえるだろう。
●  約9割の事業所がメンタルヘルスと企業パフォーマンスの関係を認識
  メンタルヘルスの問題と生産性の低下や重大事故など、企業のマイナスのパフォーマンスとの関係をどう考えるかについては、「関係がある」(42.1%)、「密接に関係がある」(22.8%)、「どちらかと言えば関係がある」(21.3%)を合わせて、約9割(86.2%)の事業所が“関係あり”と認識している。また「どちらともいえない」は9.6%で、無関係(「あまり関係がない」「まったく関係がない」「関係がない」の合計)だと考えているのは3.4%と少数だった。
  メンタルヘルスの問題は、企業経営に影響を与えるほど深刻な問題であり、近年自殺者なども増加していることから、いずれの企業もその対策には時間を費やしているわけだが、日々の業務の忙しさからか、中小企業はなかなかきちんと対策を講じられていないため、何度も同じような問題を抱え、結果的に大きな損害を被ることも少なくない。
  自殺者が13年間連続で3万人を超えている状況において、このうち約8,600人が労働者であり、「勤務問題」を自殺の原因の一つとしている者は2,600人に達している。企業の責任は、ますます重くなる中で、メンタルヘルスケア対策についてこれを機会に再度見直ししてみてはいかがだろうか。

参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「職場におけるメンタルヘルスケア対策に関する調査」結果
http://www.jil.go.jp/press/documents/20110623.pdf
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2011.07.04
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