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ハイ・イールド債への警鐘!
  リーマンショックから今年は3年目になるが、最近はハイ・イールド債を組み込んだ毎月分配型投資信託が急増している。その理由を探ってみよう。
●  人気の背景
  昨年からの世界的な景気回復の動きを受け、毎月分配を行う投資信託の残高が2011年5月末に31兆円を超えてきた。これは、2008年のリーマンショック前の水準まで回復してきたことになる。
  同ファンドは50代から70代の投資家から人気を集めており、公的年金の不足分を補う目的で購入している投資家も多い。株式市場の低迷や為替の円高等が要因で資産運用が困難となっているなかでも、ハイ・イールド債を組み込んだ投資信託は毎月多くの分配金がもらえるからである。
●  ハイ・イールド債とは
  ハイ・イールド債とは企業を買収する資金を買収対象企業の資産価値や将来のキャッシュフローを担保として発行する債券(LBO)をいい、企業を買収する資金調達の手段として発行されるようになった。
●  ハイ・イールド債の残高と償還額
  リーマンショック後はこのようなハイ・イールド債を中心としたファンドの残高が急激に伸びている。調査会社トムソン・ロイターによると、今年1〜6月初めに米国企業が発行したハイ・イールド債は1,200億ドルと昨年1年間の半分強となっている。これは金融危機の前とほぼ同じ水準であり、ハイ・イールド債バブルともいわれている。
  一方、還額については、2011年は590億ドル、2012年は603億ドル、2013年は836億ドルで、3年間合計では2,000億ドルを超えてくる状況である。
●  デフォルトリスク
  ハイ・イールド債は、デフォルトの可能性からプロ向きの債券といわれている。信用格付けが低い分、金利が高いというのが大きな特徴である。その反面、その企業が倒産し債券がデフォルトになれば大きな損失を被ることになる。いわゆるハイリスク・ハイリターンの金融商品である。
  発行体であるその国や企業の売上が伸びている間は良いが、景気が悪くなったときには、金利負担により財務力が弱くなる。2013年までの大量償還を迎え、無事に借り換えが行えればよいが、借り換えができず、一企業もしくは一国がデフォルトになった場合には、大きな金融危機を再び迎えることになる。米国大手ファンド、オークツリー・キャピタル・マネジメントのハワード・マークス会長の「資本市場は金融危機前の信用バブルが膨らんだ頃に戻りつつある」とのコメントが気になる。
  また金融危機が起きらなければよいが、起こっても慌てないようなポートフォリオ、資産設計をキチンとしておきたいものである。
(株式会社FPウィム 代表取締役 伊田 賢一)
2011.07.11
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