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「胞状奇胎(ほうじょうきたい)」告知における留意点
  通常、受精卵は子宮内膜に着床すると、絨(じゅう)毛(もう)という細かい根のような組織を伸ばして母体から栄養や酸素を吸収して将来、胎盤となります。
  ところが、染色体異常により卵(らん)膜(まく)や絨毛部分だけが異常に増殖・のう胞化し、胎児に育たずに子宮の中を絨毛組織だけで占領してしまうことがあります。これを胞状奇胎といいます。全妊娠の500分の1程度の割合で生じます。子宮筋層内にまで絨毛の侵入が認められるものは「侵入奇胎」といいます。
  胞状奇胎は、受胎後2〜4ヶ月頃から症状が現れます。子宮内の奇胎はとても急速に成長するため、通常の妊娠よりも早い時期に子宮(お腹)が大きくなるのが特徴です。ほとんどの場合、胎児は形成されないか、妊娠のごく早期に育たなくなってしまいます。
● 症状
   ・  性器出血
   ・  つわり(悪心、嘔吐)
   ・  腹部のはるような感じ(急速に増大するため)
   ・  妊娠中毒症や子癇などの重篤な合併症を引き起こすこともあります
● 検査
   ・  内診:子宮が妊娠週数に比べて大きいです(増殖速度が速いため)。
   ・  基礎体温:高温が長期間続く場合や不整の場合は疑いがあります。
   ・  超音波エコー:子宮腔内に胞状奇胎の小のう胞が充満しているのがわかります。
   ・  胎児心音・胎芽:部分胞状奇胎ではまれに確認できることもありますが、多くの場合は確認することができません。
   ・  血液検査:hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピンというホルモン)値が上昇。
   ・  尿検査:hCGが10万IU以上で疑われ、50万IU以上ではほぼ確実です。
   ・  胸部レントゲン:肺への転移の有無を見ます。
   ・  CT検査:レントゲンと併用する事もあり、転移の有無を見ます。
● 治療
  子宮内容除去術で、子宮内容を完全に除去します。完全に取り除くため期間をおいて数回行い、その後は残存細胞が絨毛がんに移行しないか観察します。数ヶ月間はhCG値の観察を行い、この間hCG値が低下しない、または増加する場合には、侵入奇胎や絨毛がんへの進展も考えます。
  侵入奇胎の場合は、がんではありませんが血行性に転移を起こしやすく、抗がん剤による化学療法が中心となります。将来的に妊娠の希望のない場合や大量出血による緊急の場合は子宮を摘出することもあります。
  絨毛がんに対しては、化学療法と手術、時に放射線療法も行われます。
● 予後
  治療経過が良ければ大部分は予後良好で、次回の妊娠も可能です。まれに侵入奇胎として存続するものや、絨毛がんへ進展するものも数%程度あります。この場合は、リンパや血流を通じて急速に転移(特に肺)することがあるので、注意が必要です。
● ご契約をいただく際には
  侵入奇胎や絨毛がんの発生がないことが重要となります。現在経過観察中のものや、完治後間もないものは、いったんお申し込みを延期したほうがよいでしょう。診断書で、hCG値を含む経過が良好なものは、死亡保険は削減等の特別条件、また医療保険については部位不担保で加入できる可能性があります。もちろん数年経過後、あるいは治療後正常出産が確認されれば、標準体で加入も可能でしょう。
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2011.07.19
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