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一時所得の計算上控除する保険料の明確化
● 生命保険関連にも、重要な税制改正項目あり
  今週のトピックスNo.2264「平成23年度税制改正案のうち、一部成立」でお伝えした通り、今年度の税制改正の一部が決定した。今回は、その中で「一時所得の計算上控除する保険料の明確化」についてご紹介する。
  これは、ある養老保険の節税スキームが焦点となったものである。養老保険には死亡保険金と満期保険金があるが、両方の受取人を法人にした場合には、保険料が全額資産計上となる。ただし、死亡保険金の受取人を役員・従業員の遺族、満期保険金の受取人を法人とすることで、保険料の1/2が損金算入できるようになる(法人税基本通達9-3-4)。この契約形態は福利厚生プラン(ハーフタックスプラン)として広く利用されている。
  ところが、今回改正の契機となった養老保険では、死亡保険金の受取人が法人、満期保険金の受取人が役員・従業員とされる。従来のハーフタックスプランとは契約形態が逆になるため、「逆ハーフタックスプラン」などと呼ばれる。
● 逆ハーフタックスプランとは
  このプランの特徴は2つある。1つ目は、法人が保険料を支払ったときの経理処理である。死亡保険金見合い分として、保険料の1/2を単純損金算入し、満期保険金見合い分となる残りの1/2は、受取人である役員・従業員本人に対する給与として損金算入する(給与課税あり)。
  税法上はこの「逆ハーフタックスプラン」の保険料処理についての規定はないため、上記の処理に法的根拠はないが、実務上はこのように処理されているものと思われる。すると、給与課税の問題はあるが、結果的に保険料の全額が損金算入されていることになる。
  2つ目は、満期保険金を受け取るときである。このプランでは、満期保険金の受取人が役員・従業員本人となるため、その本人が受け取ったときに、所得税の課税問題が発生する。保険金の受取りは一時所得となり、「(満期保険金の金額−支払保険料−50万円)×1/2」が課税対象になる。
  この時に問題となるのは「支払保険料」である。支払保険料のうち、1/2は法人で既に単純損金算入されている(給与課税部分は除く)ため、本来であれば、一時所得の計算上控除できる保険料は、給与課税された1/2部分となるはずだが、税法上明文規定は存在しなかった。そのため、実務上は法人で単純損金算入されている部分も含め、保険料の全額を一時所得から控除するケースがみられた。国税当局はこの“節税スキーム”を問題視し、今回の改正に至ったというわけである。
  具体的には、今後給与課税されていない保険料は、一時所得の計算上控除できなくなる。この改正は平成23年6月30日以後に支払われるべき生命保険契約等に基づく一時金等について適用される。ただし、今回の改正で、保険料の経理処理まで明確化されたわけではない。今後の動向、情報には十分注意していただきたい。
(村田 直 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2011.07.19
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