>  今週のトピックス >  No.2273
「1ドル=70円台」時代の到来か
  外国為替市場で円高傾向が続いている。対ドルでは7月中旬に1ドル=78円40銭台に乗せ、3月の大震災後に付けた最高値(76円25銭)をうかがう展開だ。対ユーロでも一時1ユーロ=110円を上回った。日本は巨額の財政赤字や景気低迷、政治の迷走といった問題を抱えているが、米欧も政治・経済分野で市場の信認を得ることができず、市場では対ドルで70円台の円高が定着するとの声もある。
●  米雇用統計が円高の出発点
  今回の円高の出発点となったのが、7月8日に発表された米雇用統計だ。雇用は景気のバロメーターになるため、市場への影響が大きい。なかでも非農業部門の雇用者数は重要な指標だ。事前予想は10万人前後だったが、実際は2万人弱でかなりのネガティブ・サプライズとなり、ドルが下落した。
  米景気への悲観論が高まるなか、ユーロ圏ではスペインとイタリアの国債価格が暴落した。欧州連合(EU)がギリシャ問題解決に手間取っているため、市場がユーロ圏の政策担当者に対して「ノー」を突きつけた格好だ。ユーロの債務危機が大国のイタリアなどに波及すれば、ユーロ圏の経済は大きな打撃を受けるとの見方から、ユーロも急落した。ドルやユーロが不調ということになると、投資家はひとまず円を買うしかない。
●  中国に不動産バブル崩壊のおそれ
  世界経済にとってもう一つの不安材料が、中国の不動産バブルの問題だ。中国政府はあの手この手でバブルの懸念がある不動産価格の上昇を抑えているが、一方で中国の地方政府の債務額が急速に膨らんでいる。
  中国の地方政府は直接、市場から資金を調達できないため、傘下の投資会社が金融機関から資金を借りて不動産開発を進めている。担保は地方政府が管理する不動産の開発権だが、もし不動産価格が急落すれば、開発権の価値が目減り。金融機関は投資会社への融資が焦げ付き、巨額の不良債権を抱え込むおそれがある。日本が経験した不動産バブルと同じような構造だ。
●  中国経済が低調になれば…
  もし、これまで堅調に発展してきた中国経済が不況に陥ると、世界経済への影響は甚大だ。これまで中国の旺盛な需要を背景に輸出を拡大してきた資源国の通貨は下落する可能性が高い。オーストラリアドルやブラジルレアルといった資源国通貨は、FXや投資信託を通じて日本の個人投資家が巨額の投資をしているが、こうした投資が巻き戻り、大幅に円高になることも考えられる。しばらくは急激な円高リスクへの目配りが必要だろう。
(内容は7月19日執筆時点のものです)
2011.07.25
前のページにもどる
ページトップへ