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「慢性硬膜下血腫」告知における留意点
● 慢性硬膜下血腫[まんせいこうまくかけっしゅ]とは
  脳実質を包む膜には3種類あり、頭蓋骨に近い方から「硬膜」「くも膜」「軟膜」となっています。この硬膜の内(下)側にじわじわと出血がおこり、血液がたまって増大していく疾患が慢性硬膜下血腫です。
  症状は、頭痛・吐き気・嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状・手足のしびれ・麻痺(血腫による脳の圧迫症状)・歩行障害・思考力や自発性の低下、痴呆(老人ぼけ)・意識障害や昏睡(脳ヘルニアなどの重症状態)などがあります。
  一般には、50代の中高年者に多くみられますが、小児の場合は生後数ヵ月がピークです。若年でも飲酒をする方や肝機能障害など出血傾向のある人は起こりやすいです。近年の高齢化社会の中で、患者数は増加傾向にあります。
● 原因
  軽微な頭部打撲などを原因として、少しずつ出血が繰り返されるので、初期には無症状で数週間〜数ヵ月後に症状が現われます。肝障害による血液凝固異常が出血の原因となる場合もあります。水頭症に対する短絡術などの術後や脳に萎縮がある人、また、硬膜へのがんの転移、透析が原因となることもあります。
● 診断
  詳細な問診等で慢性硬膜下血腫が疑われれば、CTやMRI検査をします。CTでは血腫は白く(高吸収域)三日月状に映りますが、慢性の血腫では血液濃度が薄く、灰色や黒色(低吸収域)に映ることもあります。造影剤では、脳の溝(脳回)が強調され血腫の存在が明らかになります。MRIでも血腫が白くはっきり映ります。
● 治療
  軽微な場合は吸収され自然に治癒したり、浸透圧利尿剤(マニトールやグリセオール)の連日点滴などを行うこともありますが、通常は局所麻酔下で、頭蓋に小さな穴をあけ、穿頭血腫ドレナージ術で血腫を除去し、その後生理食塩水などで穿頭洗浄術を行い出血源となる被膜の炎症を抑えます。
  石灰化したものや、難治性・再発性のものは、皮膜ごと摘出する大開頭術も行われます。近年は、血腫が多房性で難治性の症例などに内視鏡を併用した穿頭血腫洗浄術も行われています。
● 予後
  脳ヘルニアなどが進行している場合を除き、麻痺や言語障害、痴呆等の後遺症や合併症なく完治すれば脳外科手術の中でも予後良好な疾患です。しかし、術後1ヵ月前後の早期には、約10%に再発が認められます。
● ご契約をいただく際には
  慢性硬膜下血腫の既往症のあるお客様から告知をいただく場合、下記について告知されることをおすすめします。
  診断日
  治療内容
  後遺症の有無
  現症の場合、軽度であっても、合併症や後遺症・再発の可能性も考えられるため、一旦はお申し込みを延期とした方がいいでしょう。
  手術後、数年間経過していれば生命保険は特別条件付きにて加入できる可能性があります。入院保険については、再発やてんかんなどの合併症が起こる可能性があるため、加入は難しいかもしれません。
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2011.08.01
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