>  今週のトピックス >  No.2281
米国の債務問題が浮上してきた
  米国の連邦債務の上限引き上げに向けた与野党交渉が難航したことで、米国債のデフォルトが現実問題となり、米国債の格付け引き下げも行われつつある。
  これらが為替や債券価格などにどのような影響があるのか検証してみたい。
●  米国債務問題
  表1の通り、米国格付け会社S&P社(スタンダード&プアーズ社)によると、日本国債は東日本大震災や東京電力福島第1原発の事故などにより、日本の財政がこれまでの予想より悪化する懸念があり、「AA」から「AA-」(AAマイナス)に引き下げられた。一方、米国債は現在格付けでは最高の信用格付けとなっている「AAA」(トリプルA)となっている。
  しかし、米国の連邦債務の上限引き上げに向けた与野党交渉が難航しており、今後議会で債務上限引き上げに合意できない場合には、米国債のデフォルト(債務不履行)や格下げの恐れが出てきている。
●  デフォルト
  万が一、米国債がデフォルトになった場合には、どのようなことが起きるのだろうか。
  米国の場合は資金調達の議会上の停滞が起こしたデフォルトとなるため、利息の支払いが一時的に遅くなる程度かもしれない。ギリシャの場合は、資金調達が不可能になった末のデフォルトであるが、米国のデフォルト問題はこれとは大きく違う。しかし、デフォルトにより、米国債の信用はく失墜するだろう。
●  格付け引き下げ
  米国債の格付けが引き下げられた場合、米国債は売られ価格は下落し、金利は上昇するだろう。米国通貨も売られ、さらなる円高、ドル安となることも考えられる。その結果、米国の金融機関や企業は資金調達が困難となり、米国の景気は悪化することが想定される。
  投資家として、不安な要素を抱える米国債より安全性の高い日本円や金へ投資することが予想されるため、日本円や金価格が高騰する場面もあるかもしれない。米国の景気や財政問題で大きく揺れる為替・債券市場であるが、ギリシャ、ポルトガル、スペインのデフォルト問題を抱えるユーロ市場や世界全体の経済動向を見ながら投資するようにしたい。
  このトピックスが掲載される頃には、米国の債務問題は無事決着していることを希望するが、万が一の場合には、2008年に起きた金融危機が再燃しないことを切に願うばかりである。
(株式会社FPウィム 代表取締役 伊田 賢一)
2011.08.08
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