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多嚢胞性卵巣[たのうほうせいらんそう]」告知における留意点
● 多嚢胞性卵巣
  卵巣内にはたくさんの原始卵胞があります。月経期頃より多数の卵胞が成熟し始めますが、最終的に成熟卵胞まで成長するのは月に1個だけで、それが約2cm程度まで成長すると破裂し、中の卵細胞(約0.1mm)が排卵されます。残りの卵胞は途中で発達をやめ、細胞が死滅します。
  多嚢胞性卵巣は、卵胞の皮が厚く固くなって未成熟の卵胞が多数できたり、卵巣を覆う皮膜が厚く硬くなって排卵障害がおき、次々に小卵胞が真珠のネックレスのように連なって多嚢胞化し腫大したものです。
  排卵障害のないものや、排卵障害のみの場合は単に多嚢胞性卵巣(PCO)といいます。無月経や不妊、男性ホルモン過剰(にきび、多毛)、肥満など一連の疾患を伴ったものを多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)といいます。
  生殖年齢の女性の約5〜10%にみられる一般的な疾患で、多嚢胞性卵巣(PCO)の約7割に排卵障害があり、逆に排卵障害の約3割はPCOともいわれています。
● 症状
  排卵障害(卵胞自体の皮膜や卵巣を覆う皮膜の肥厚や硬化による)
  不妊症(上記排卵障害に伴うもの)
  月経異常(無排卵周期症、稀発月経、無月経)
  男性化(男性ホルモンによる多毛、にきび、低音声、陰核肥大)
  肥満
  月経過多や出血(女性ホルモンの子宮内膜への乱れのため)
● 治療
  妊娠希望の場合は、排卵を促進させるため排卵誘発剤クロミフェンを内服します。インスリン抵抗性を改善するため、糖尿病治療薬のメトフォルミンを併用することもあります。さらに、卵巣を直接刺激するゴナドトロピン製剤を注射したり、男性ホルモンを抑えるためプレドニンを併用したりすることもあります。
  外科的治療としては、腹腔鏡で卵巣表面にレーザーや電気メスで小さな穴をたくさん開けて排卵しやすくする方法も有効です。
  以上の治療を行っても妊娠に至らない場合には、人工授精(AIH)や体外受精(IVF)も考慮されます。妊娠を希望しない方も、無月経の状態が長く続くと子宮内膜が肥厚し、過剰になると子宮内膜がんのリスクも増加します。低容量ピルや経口女性ホルモンを定期的に服用し、性器出血を起こすことで、内膜の肥厚や子宮内膜癌のリスクを減少させます。
● 合併症
  排卵誘発剤のHMGを用いると多児妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を起こすこともあります。脂質代謝異常やインスリン抵抗性亢進など、メタボリック症候群を呈していることも多いです。
● ご契約をいただく際には
  多嚢胞性卵巣の既往症あるいは現在症状のあるお客様から告知をいただく場合、下記について告知されることをおすすめします。
  治療開始期
  治療内容
  不妊治療の有無
  合併症の有無(ある場合には原疾患に基づく査定となります)
  不妊治療中でも肥満その他の合併症のないものについては、死亡保険については特に問題なく加入、医療保険については部位不担保等の条件付きで加入できるかもしれません。肥満、高血圧、糖尿病など合併症あるものはそれぞれ原疾患の評価を加算しての査定となります。合併症の有無を告知していただくことが特に重要でしょう。
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2011.08.15
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