>  今週のトピックス >  No.2297
安全な投資商品はない
  長らく電力株は、安定した収益が得られ株価も比較的安定しているため、長く保有するのに適した株式(資産株)といわれていた。安定志向の強い人や、老後の楽しみとして、また年金の不足を補うため、配当利回りの高い電力株に投資している投資家は多い。
  また、牧場に投資して子牛を育て売却し、その収益を配当として投資家に還元する牧場投資も、“高利回り”として人気を呼んでいた。
  しかし、東日本大震災に伴う原発事故により状況は大きく変わった。
  東京電力株は無配に転落し、株価も一時は大震災前の10分の1まで下落した。また、あの安愚楽牧場も先日経営破たんし、投資に元本保証、配当保証はないということを改めて思い知らされたのではないだろうか。
  大震災以降、日本および海外の株価下落、急激な円高、米国債格下げ、欧州不安等、世界的に経済状況が変化してきた。個々人の投資スタンスについて考え直さなければならなくなった。
1. パンフレットや説明書等の確認
  今回の件でわかったように、元本が保証されたり、必ず分配金が受け取れるという投資商品はない。
  もし説明書やパンフレットに「安定」とか「〜保証」と書かれていても文字通り受取ってはいけない。どこが保証しているのか、何が保証されているのかを確認することが重要である。
2. 分散投資
  同じ銘柄、同じ業種、同じ商品に集中投資しないことが肝心である。
  同じものに投資した場合、良い結果が得られるときには何倍もの利益が得られるが、一転して反対方向(マイナス)に向かった場合には大きな損失を被ることもある。
  違う企業でも同業種であれば“分散投資”にはならないので、そのような投資行動は避けたいものである。
  世界同時株安や急激な円高など、予想外の動きになることもあるので、海外だけに投資を集中させることは危険である。
  また、不動産への投資も行う際には、空家リスクに注意したい。同じ投資資金であれば、マンション1室より、アパート1棟に投資する方がリスクは少なくなる。マンション1室に投資した場合、空室になると家賃収入が入らなくなるが、アパート1棟であれば、10室のうち1〜2室が空室であっても、他の入居者からの家賃収入が得られるため、分散投資の効果が得られる。
  今回の大震災で、東北地方のマンションやアパートに投資していて、津波の被害にあったという話も聞いたが、地域を分散して投資することも重要である。
3. 決算書類を読む
  過去に投資用牧場が破たんしたことが何度かあったが、ほとんどのケースは経営状態が悪化したことが原因だった。投資商品を購入するときには、事前に投資する会社等の経営状態を確認し、購入後も継続的にチェックしておくことが重要である。
  このように少しの注意や心がけで、投資スタンスを変えることができる。不安定な政治・経済状況が続く中、安易な投資行動は避け、これからの投資方針を見直してみる必要があるだろう。
(株式会社FPウィム 代表取締役 伊田 賢一)
2011.09.05
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