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教育訓練費の税額控除、廃止のはずが実質2年延長に
●  教育訓練費割合が0.15%以上なら一定割合を税額控除
  中小企業者等における教育訓練費に係る税額控除の復活に関心が寄せられている。
  教育訓練費に係る税額控除とは、損金算入される労務費の額のうちに教育訓練費の額の占める割合(教育訓練費割合)が0.15%以上である場合に、その教育訓練費の一定割合の税額控除を認める制度である。
  同制度の適用対象法人は、青色申告法人のうち、資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人(一部の大法人の子法人を除く)や、資本または出資を要しない法人のうち常時使用する従業員の数が1000人以下の法人など、中小企業者または農業協同組合等である。
  教育訓練費に対する税額控除限度額は、教育訓練費割合が0.15%以上かつ0.25%未満なら、その損金算入された教育訓練費の額に「(教育訓練費割合−0.15%)×40+8%」で算出した割合を乗じた額、また、教育訓練費割合が0.25%以上なら、損金算入された教育訓練費の額の12%相当額までの税額控除が認められる。
  ただし、税額控除限度額がその事業年度の法人税額の20%相当額を超える場合には、その20%相当額を限度とする。
●  廃止予定が2012年3月31日まで延長
  同制度は、もともとは今年3月31日をもって廃止される予定だったが、ねじれ国会や東日本大震災の影響で国会審議が滞り、他の措置法とともに「つなぎ法案」によって今年6月30日まで3ヵ月延長されていた。それが、国会で棚上げとなっていた2011年度税制改正法案から与野党合意がなされた部分だけを切り離した新法案の成立により、2012年3月31日まで延長されることとなったのだ。
  教育訓練費にかかる税額控除の適用関係は、「○年〇月○日までに開始する事業年度について適用」という規定ぶりであるため、「6月末まで」とされたつなぎ法によって、つなぎ期間である3ヵ月以内に事業年度が開始する会社は、実質1年延長したのと同様の効果が得られていた。ところが、今回の改正で同控除の適用が「2012年3月31日まで」に延長されたことから、実質2年延長したのと同じ効果が得られたことになる。
●  教育訓練費・労務費の範囲は…
  ちなみに、教育訓練費として認められるのは、「外部講師・指導員謝金」、「外部施設等使用料」、「外部への教育研修委託費」、「外部研修受講料等の参加費」、「研修用教科書その他教材費」の5項目。教育訓練費は原則として外部支出費用とされているが、子会社やグループ会社の役員(または使用人)が講師を務め、その働きに対して報酬を支払った場合や外注委託した場合には、教育訓練費に該当する。
  また、この制度の対象となる労務費とは、給与等(俸給、給料、賃金、歳費、賞与やこれらの性質を有する給与で使用人に対して支給するものに限られる)、法定福利費(健康保険料、労働保険料など法令の規定により事業主が負担することとされている費用で使用人に係るものに限られる)及び上記に掲げる教育訓練費をいう。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)

※タックス・コム発行図書 「中小企業のための生命保険講座(経営者編)」など
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2011.09.05
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