>  今週のトピックス >  No.2299
「子宮内膜症」告知における留意点
  子宮内膜症とは、本来あるべき子宮内腔「以外」の場所で、子宮内膜が増殖する疾患です。細胞自体は子宮内膜と同様の構造なので、月経周期にあわせて内膜の増殖や剥離が起こり、出血することもあります。
  出血により周辺組織に血液が浸潤し、繊維化・癒着を起こして骨盤内膿瘍を生じることもあります。転移や浸潤するなど悪性腫瘍のような性質も持つこともありますが、ほとんどは良性の疾患です。月経のある女性の数%〜10%程度に見られます。
  発生する場所は卵巣が一番多く、次いで卵管や子宮に発生します。
  卵巣に生じた場合には「チョコレートのう腫」、子宮の筋層内に入りこんだ場合には「子宮腺筋症」と呼ばれます。
● 症状
  月経時の痛みと月経困難症が主要な症状です。その他、腰痛、下腹部痛、仙骨部への放散痛・排便・排尿痛月経過多などがあります。また、不妊症の原因の一つにもなります。
● 治療
  「薬物療法」と「手術療法」があります。
  病状の進行には卵胞ホルモンが大きく関与しているため、関与するホルモンの分泌や働きを抑える治療をします。
     <薬物療法>
   ・偽閉経療法  ……  体のホルモン状態を閉経状態と同じ状態にします。Gn-RHアゴニスト点鼻・注射を約6ケ月ダナゾール内服を約6ヵ月。
   ・偽妊娠療法  ……  体のホルモン状態を妊娠と同じ状態にします。低用量のピル内服。
     <手術療法>
   ・保存手術  ……  卵巣や子宮を残し、病巣のみを摘出する手術ですが、再発は多くなります。
   ・卵巣機能温存手術  ……  女性ホルモンを分泌する卵巣の正常な部分を残し、子宮を摘出する手術です。閉経まで間のある患者さんに行いますが、再発する可能性もあります。
   ・根治手術  ……  子宮(子宮腺筋症)・卵巣(チョコレートのう腫)・卵管を全て摘出します。再発はなくなりますが、更年期障害のような症状が出ることもあります。
     子宮腺筋症は病巣が子宮全体に及ぶため、一般的に単純子宮全摘術が行われていましたが、最近では超音波を使った治療(FUS)も行われるようになりました。
● ご契約をいただく際には
  子宮内膜症の既往症のあるお客さまから告知をいただく場合は、以下を記入されることをおすすめします。子宮内膜症の殆どは良性ですが、子宮内膜増殖症や子宮内膜ポリープとの鑑別が重要です。
  ・診断日
  ・治療法(薬物治療か手術か)
  ・手術の有無(あれば手術の種類)

  子宮内膜症は、根治術以外は再発の可能性もあるので、医療保険については一定期間の部位不担保での加入となるでしょう。
  妊娠可能期間中あるいは50歳以降で子宮全摘出術をしている場合や、入院期間が長期にわたる場合、また放射線・化学療法等をしている場合は悪性疾患の可能性も考えられるため、加入が難しいかもしれません。
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2011.09.12
前のページにもどる
ページトップへ